ロールケーキのような切り口も楽しい ホームステイ先で学んだアメリカの家庭料理
ミートロール

旅先の味、幼い日に口にした味、母の味、だれもが1つは自分にとっての想い出を
持っているのではないでしょうか。
今回紹介するのは、エッセイスト・橋本貴美子さんのホームステイ先の思い出の味ミートロール。
アメリカでは知られた家庭料理の1つです。
他にも応用のきく1品ですのでぜひ挑戦してみてください。


 何事にも「きっかけ」が存在します。しかも、たいていは予期せぬことで、「思えばあれが“きっかけ”だった」と後に気づくもののようです。お料理がストレス解消という私にとってのそれが、この「ミートロール」です。
 16歳の夏休み、アメリカ合衆国メンフィス市近郊の町にホームステイしました。メンフィスはエルビス・プレスリーの生まれた土地、車で数時間のところには「大草原の小さな家」の作者ローズ・ワインダー・レインの生家があるということ以外、これといった“取り柄”のない郊外でした。
 意地っ張りの私は、ホームシックに罹りながらも、それを悟られまいと、帰国の日を指折り数えていました。残りの滞在日数分の炭酸飲料を買い込み、お風呂上がりに1本ずつ飲んでは「あと何本」と、さながら「番長更屋敷」のお菊さんのように減っていく瓶を数えていました。
 そんなある日、ステイ先のルース夫人が分厚い料理の本を買ってきました。夏の日の思い出に、そのなかから一緒につくろうという提案です。夫人は「何をつくるかは、貴美子、あなたが決めるのよ」と言いました。
 その本には、オードブルからデザートに至るまで、さまざまな家庭料理が紹介されていました。私は、とても見栄えのする「ミートロール」を選びました。3種類の香辛料とケチャップ、この隠し味のお陰でおいしいだけでなく家庭的な温かさが感じられる出来上がりでした。飾りつけやすく、カットしてもロールケーキのように楽しい1品です。
 今回、中に巻いたのはホウレン草とハムですが、ホウレン草をブロッコリーに替えてもよいでしょう。コツはミート地を分厚く広げないこと。中まで火が通りにくくなり、表面を黒こげにしてしまいかねません。このミート種はとっても“お利口さん”で、以来20年余り、私はハンバーグもロールキャベツもこの種をベースに料理しています。
 ご夫婦には知能障害をもった娘さんがいました。彼女は自分の思うようにならないと発作のように叫び声をあげました。そんなとき、夫人は彼女の部屋に2人で籠もり、いつも静かに語りかけていました。そして、何もなかったかのように部屋から出てくるのでした。自分も母になって、夫人の微笑みの優しさがわかったような気がします。
 今、料理教室に通ったりしていろいろなレシピを楽しんでいます。「きっかけ」だった「ミートロール」を久しぶりにつくりながら、ルース夫人の笑顔に逢えたような気がしました。(エッセイスト・橋本美貴子)

■材料(4人分)
あいびきミンチ……300〜350g
玉ねぎ……1/2個
にんじん……1/2個
しいたけ……2個
ホウレン草……3束
スライスハム……12枚
卵……1〜2個
牛乳……大さじ2〜3
ケチャップ……大さじ1〜1.5
食パン……1枚
パン粉……適量
スライスチーズ……適量
ローレル(粉末)……適量
オレガノ(粉末)……適量
ナツメグ(粉末)……適量
塩、こしょう……適量

【つけあわせ】
プチトマト……適量
サニーレタス……適量
オリーブ……適量

●作り方
1. 玉ねぎ、にんじんは皮をむき、しいたけは石突きをとる。
  適量の大きさに切ってから、フードプロセッサーにかけて細かくする。
2. 玉ねぎを炒める。ボウルに(1)と炒めた玉ねぎ、あいびきミンチを入れてから、
  卵、パン粉、牛乳、ケチャップと手でちぎったパンを加えて粘りが出るまで混ぜ合わせる。
3. (2)にローレル、オレガノ、ナツメグをふり、塩、こしょうを加えて
  全体にいきわたるように混ぜ込む。
4. 湯がいたホウレン草を1cmくらいに切る。
5. ホイルを広げ(3)を横20〜23cm、縦25cm、厚さ0.7〜0.8cmくらいの長方形にのばす。
  周囲1cm程度あけ、(4)をまんべんなく広げて置き、その上にハムを重ね、
  すきまができないようにのせていく。
6. 手前からホイルを持ち上げて、(5)を巻寿司を作るように巻いていく。
7. 170度〜180度のオーブンレンジで10〜13分ほど焼き、
  表面が焼けてきたらチーズをのせてさらに2〜3分過熱する。
8. 大皿にのせ、つけあわせを盛りつける。



カットすると渦巻き状になったハムとホウレン草の彩りが美しく、目にも楽しい