人との出会い

文/橋本貴美子
フラワーアレンジメント/芳谷里佳

 夏の夜空にロマンティックに広がる星座たち。織姫と牽牛にたとえられているのは、それぞれ「こと座一等星ベガ」と「わし座一等星アルタイル」です。この2つの星の間は16光年、約152兆キロメートルといわれ一晩で出会うには実際は到底困難な距離です。それでも、私たちは2人が出会えるようにと、毎年七夕には夜空へと思いを寄せます。
 人の出会いは不思議なものですね。一生の間に知り合える人数には限りがあり、星の数ほど出会っているなかから、親しくなれる人はほんの一握りです。
 そう思えば険悪な仲の相手でさえ、何らかの意味があり、出会うべくして出会っているのかもしれません。
 ベガとアルタイルの橋渡し役を演じる白鳥座が横たわるのは天の川です。日本人にとっては物語のなかでどんどん水かさを増し、2人を引き裂いているイメージの天の川ですが、欧米ではこれを「MILKY WAY」と呼んでいます。ギリシャ神話に登場する女神ヘラがヘラクレスに与えた乳が流れ出しできた川といわれ、こう呼ばれているそうです。
 母乳は子供が吸うことでホルモンが刺激され、血液が母乳となって新しい命の力となります。私自身、帝王切開の出産後、少しずつながらも母乳を与えたときには、生命の神秘を感じたものです。
 一般によくいわれることですが、親も子も相手を選ぶことが出来ません。何億分の一という壮大な確率のなかから生まれ、互いに出会うことは何とロマンティックな出来事ででょう。長い地球の歴史のなかでは、親子の出会いも満員電車で隣り合うくらいにほんの一瞬の出来事なのかもしれません。
 今回のアレンジメントのように、キャンドルの揺らめきを星の瞬きに見立て、白鳥座をイメージする優しい花を真ん中に、2人の出会いについて聞いてみるのもよいかもしれませんね。余りにも近すぎて見失ってしまっている「一期一会」を夜空の星の力を借りて、素直に表現してみてはいかがでしょう。逢いたくても逢えない切なさを、力にしている2つの星がきっと応援してくれることでしょう。

 
今月のアレンジメント

花材
オンジューム、ベアグラス、スパンコール、パールビーズ、キャンドル

ポイント
七夕の夜をイメージしたこのアレンジメントでは、全体を幻想的な雰囲気にまとめます。クロスは濃いブルーのものを選び、その上にスパンコールやパールビーズなどをちりばめることで夜空と星たちを思わせるような配置に。キャンドルは水に浮くタイプのものを使い、ブラスと水のきらめきを出すとセンターのグラスが引き立ちます。
 
橋本貴美子
エッセイスト。毎日放送勤務の傍ら、料理やフラワーアレンジメントに関するエッセイを執筆中。昨年度『りぶる』で紹介した遊学中のメンフィスでの思い出とミートロールのレシピが好評。今月からスタートする本コーナーでは毎月、花をテーマにしたエッセイを連載。

芳谷里佳
フラワーコーディネーター。フランス・ピヴェルディ校にて、フラワーアーティストの研修に参加。その後オランダ、ドイツのフローリストに師事。現在はウェディング、パーティー、レストラン装花、空間装飾を手掛ける。ヨーロピアンアレンジメント教室も開設。

撮影・インプレス 鈴木雅之