コラボレーション

文/橋本貴美子
フラワーアレンジメント/芳谷里佳

 先日、娘の通う保育園で「夕涼み会」が行われました。それに間に合うようにと、私の母が主人に浴衣や下駄を贈って来てくれました。浴衣など久しく温泉宿くらいでしか着ていない主人は、子どものように袖を通す瞬間を待ちに待っていました。
 いよいよその日、彼の広い背中を目の前に兵児帯を締めた瞬間、なんとも不思議な物を心のなかに感じました。結婚を夢見る頃に、将来、子供の着物を着付けることもあるだろうと想像はしていたけれど、旦那様の帯を締める自分を想像していなかったのです。
 私たちは共働きで、育児休暇を終え仕事に復帰して以来めまぐるしい日々を過ごし、主人との会話はもっぱら朝の通勤電車のなかだけという昨今でした。
 なぜその瞬間だったのかは分からないのですが、「家族」というものを建設中である自分を感じたのです。新しい「家族」という集合体、それを一緒に作っている人なんだなぁと、やっともてた週末らしいのんびりしたなかでの瞬間に感じました。
 最近、異業種の人や会社が協力し、新しい何かを生み出すことを「コラボ」(コラボレーション)と称しています。今月の作品も、芳谷先生とお友達の器との「コラボ」だそうです。器に凛とした空間を創造すると、そこに新しいものを感じることができますね。
 アメリカ先住民族は、全ては関わりあっているという意味で「ミタケ・オアシン」と言うそうです。人と人とが出会うとき、必ず何かが生まれているはずです。それは新しい出会い・組み合わせばかりに存在するのではなくて、当たり前に周囲に存在する人との間にも時間をかけて常に何かが生まれていると感じることはできませんか?
 仕事・家事・育児などさまざまなことに追われ、新しい発見を楽しむことを少し忘れがちな方も多数おられることでしょう。
 ふとした自分の心の動きにも敏感になり、リフレッシュした気分になれる、これもある意味では自分自身との「コラボ」なのかもしれません。夏が終わりこれから迎える季節の変わり目、また新しい発見ができるといいですね。

 
今月のアレンジメント

花材
アリストロメリア、菊、リンドウ、ワイヤープランツ、ルビーグラス、山こけ、サンキライ

ポイント
今回は友人の作った備前焼の器とコラボレーションしてみました。肌色の器に茶色に色づいたサンキライを添え、なかに苔玉を置いて草花を挿していきます。
和室の一角に置くことで秋の訪れを感じるアレンジメントです。これまで使っていなかったけれど、気に入っている器があれば、この機会にぜひ好きな秋の草花を活けてみてください。
 
橋本貴美子
エッセイスト。毎日放送勤務の傍ら、料理やフラワーアレンジメントに関するエッセイを執筆中。昨年度『りぶる』で紹介した遊学中のメンフィスでの思い出とミートロールのレシピが好評。今月からスタートする本コーナーでは毎月、花をテーマにしたエッセイを連載。

芳谷里佳
フラワーコーディネーター。フランス・ピヴェルディ校にて、フラワーアーティストの研修に参加。その後オランダ、ドイツのフローリストに師事。現在はウェディング、パーティー、レストラン装花、空間装飾を手掛ける。ヨーロピアンアレンジメント教室も開設。

撮影・インプレス 鈴木雅之


最新号へ戻る