よそゆきの写真

文/橋本貴美子
フラワーアレンジメント/芳谷里佳

 皆さんは1年にどれほど写真を撮影されますか?
 幼いころからお正月は写真室で記念撮影をしたものです。そのときは1枚1枚がこんなに貴重なものになるとは思いもしませんでした。これに習い、我家でも毎年“よそゆき”でめかし込んだ1枚を撮影することに。まだ娘は2歳半ですが、入籍日から数え、5枚の“よそゆき”写真がとてもよい思い出とともに存在しています。
 祖父母が元気なころの写真から、数十年が流れ、写真というスライドのなかに1人消え、1人増え、それを繰り返していく家族の流れを感じ入ることができます。
 時折、日本人観光客を揶揄して、カメラを下げる絵などを目にしますがこれは万国共通のものだと思われませんか? 楽しいときを永遠のものにしたいという気持ちは誰にでもあるものでしょう。
 20代のころ、振袖を着るごとに写真を撮るように母に言われ、なんとも面倒で嫌な思いをしたものですが、あれから同じくらいの歳を加え、どれだけ気に入らなかったショットでさえ、人生の宝物になっています。
 写真が日本に現れたころは、命を取られると恐れられたものだそうですが、今や正反対。若者たちはそのときを惜しむかのようにカメラの前でポージング。70前後の両親も、旅先では観光名所のフレームに顔をのぞかせます。
 無意識に撮影したものも、二度と取り戻すことのできない大切な時空間です。
 私のスケジュール帳にある3枚の写真はそれぞれ大切なことを必要なときに呼び起こしてくれます。両親、弟、主人が写った結婚式の写真は、初心を思い出し穏やかな心を与えてくれ、娘のものは頑張る勇気を、母が生後間もない私に授乳している写真は与えられた無償の愛情を教えてくれます。
 欧米人に比べ、家族の写真を持つ習慣はありませんが、これはときにお守りのような効力を発揮するものです。
 心のアルバムに収まりきらない数々の思い出が今年はどれだけ増えるのかとても楽しみな年始であります。

 
今月のアレンジメント

花材
サンダーソニア、オレンジューム、ハラン、トクサ

ポイント
新しい年を迎え、近づきはじめる春の生命力を、オレンジ色のサンダーソニアとグリーンのトクサで感じるアレンジメントです。
ガラスの器には、背を高く切ったトクサをぎっしりと詰め、そのなかに追い羽根やサンダーソニア、オレンジュームといった花を活けていきます。
また、ガラスの器の上からハランの葉を巻き、その上に帯締めを締めることでお正月らしい華やかさと和の趣を演出します。
床の間などに飾ることによってお客様をお迎えするアレンジメントになりますし、背を低くすることで玄関なども飾ることができるものにもなります。皆様もぜひ、新年にふっさわしいアレンジメントをつくってみてください。
 
橋本貴美子
エッセイスト。毎日放送勤務の傍ら、料理やフラワーアレンジメントに関するエッセイを執筆中。昨年度『りぶる』で紹介した遊学中のメンフィスでの思い出とミートロールのレシピが好評。今月からスタートする本コーナーでは毎月、花をテーマにしたエッセイを連載。

芳谷里佳
フラワーコーディネーター。フランス・ピヴェルディ校にて、フラワーアーティストの研修に参加。その後オランダ、ドイツのフローリストに師事。現在はウェディング、パーティー、レストラン装花、空間装飾を手掛ける。ヨーロピアンアレンジメント教室も開設。

撮影・インプレス 鈴木雅之


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