距離を縮める秘薬

文/橋本貴美子
フラワーアレンジメント/芳谷里佳

「これでお酒をつくりなさい」
 神様がそうおっしゃられたのがブドウだとか。キリストの“聖杯伝説”にその歴史を見ることができるように、ワインの歴史は紀元前にさかのぼります。
 今では日本でもよく知られる“ボジョレーヌーボー”は毎年11月の第3木曜日が解禁日。ワイン愛好家たちはその日の深夜0時に集まりお祭り騒ぎをするのだとか。
 ワインを含め、適度なアルコールは緊張をほぐし、場を和ませる効果を発揮する『秘薬』です。
 プロ野球の祝勝会でのビールかけ、レーサーの表彰台でのシャンパンシャワー。人が集まり何かを祝う場に、アルコールはつきもの。実は私もその昔、「ビールかけ」を経験したことがあります。
 1990年に大阪で行われた「花博」の最終日。パビリオン閉館とともに館内は大宴会になりました。言葉では表現できないほどの素晴らしい思い出が次々とよみがえり、おそらくその場に居合わせた全員の思いが交錯したのでしょう。誰ともなくビールかけがはじまりました。
 このビールかけ、私の人生のなかで後にも先にもこんなことが許されるのはこのときだけだと思います。そのときは「この達成感を表すのにはこれしかない!」と感じたのをはっきりと覚えています。
 アルコールが過ぎるのはいけませんが、ちょっとした食事の席にワインを1杯ずついただくといった適度のお酒は、職場では見ることのできない上司やお得意さまの新たな一面を知ることができたりと、人間関係の距離を縮め、思いがけない会話など、その奥行きも広がります。また、それが仕事にもよい影響を与えることもありました。私自身、公私にわたりこの『秘薬』とともに楽しいひとときを過ごし、またそれに助けられたことも多いように思います。
 秋ならではの夜長にゆったりとお気に入りのワインの栓を抜いたり、今回の写真のようなランチを大切な人と味わってみたりと、この『秘薬』を上手に取り入れて楽しいひとときを過ごしてみてはいかがでしょうか。

 

今月のアレンジメント

花材
プリザーブドフラワー、バラ(ピンク、オレンジ、サーモンピンク)、ライスフラワー、デイジー、リンゴ、藤、デザイナーワイヤー

ポイント
今回はランチの席など食卓を飾るためのアレンジメントです。ワインなどを一緒に並べることも考慮に入れてあまり高さを出さずに仕上げるようにしています。全体のカラートーンも少し柔らかな色彩のものを使うことで、目にやさしい食事の席に相応しいスタイルになります。食卓に添えるアレンジメントは、その時々のお料理の内容、色などをみながらカラーのバランスを取ることがポイントになります。

 
橋本貴美子
エッセイスト。毎日放送勤務の傍ら、料理やフラワーアレンジメントに関するエッセイを執筆中。昨年度『りぶる』で紹介した遊学中のメンフィスでの思い出とミートロールのレシピが好評。今月からスタートする本コーナーでは毎月、花をテーマにしたエッセイを連載。

芳谷里佳
フラワーコーディネーター。フランス・ピヴェルディ校にて、フラワーアーティストの研修に参加。その後オランダ、ドイツのフローリストに師事。現在はウェディング、パーティー、レストラン装花、空間装飾を手掛ける。ヨーロピアンアレンジメント教室も開設。

撮影・インプレス 鈴木雅之