卒業の役割

文/橋本貴美子
フラワーアレンジメント/芳谷里佳

 卒業式に憧れの人の第二ボタンを貰うというセンチメンタルなことを今の女子高生もしているのでしょうか?そのボタンに青春の思いを込めて、机に仕舞い込んだ方もいらっしゃると思います。
 これまで何回もの卒業式を3月に迎えてきましたが、その度にドキドキし、慣れ親しんだ世界との別れの悲しみを胸に次の世界へと飛び込んで行きました。
 でも、人生において「卒業」はこれだけではないのですよね。独身との別れ、肉親との別れ、職場との別れなど、さまざまな別れがが人生には巡ってきます。
 しかし、大切なのはこの卒業をうまく乗り切り、その悲しみをバネに目的や夢を持つこと。逆に言うと、目的や夢がきちんと設定されていなければ、卒業しても方向性を失い悲惨な精神状態に陥ってしまうかもしれません。
 それは、今までと違う世界へ旅立つとき、忘れずに持っていくべき荷物なのではないでしょうか。
 昨年4月に職場復帰して以来、子育てという時間制約のなかで以前の自分から卒業させられたことを痛感し、悶々とした日々を過ごしていました。それがある日、目から鱗が落ちたようにふっきれました。その状況だから待つことのできる目的が見つかったのです。今はその目標に向かい努力をしている毎日です。
 目的のない人々はともすると、自分のことを棚に上げ、周囲の状況にばかり批判の目を注ぎます。でも、それはとても悲しいこと。たとえ、狭い世界でも必ず頑張れる希望の種は見つかるものです。「見つけ方」、それは常に頭を柔らかく保ち、悲観的に思う要因を場合によっては書き出して、反対のことを設定する。日々の生活のなかで吸収しようとする気持ちさえ持てば、誰にでも「夢」は飛び込んで来ることでしょう。
 岐路に立った自分が迷うことのないように、さまざまな「卒業」を迎えたときには、心に希望の種を植えて行きたいと思います。その種まき作業は、きっと人生の灯火が消えるまで繰り返されるのでしょう。「卒業」とは、新しい目的へ邁進するための「入学」のときと言えるかもしれません。

 

 

今月のアレンジメント

花材
チューリップ、ラッピング用ペーパーバッグ、ミサル麻(白)

ポイント
今回のテーマは卒業。それぞれの新しい旅立ちと門出を祝う花束をイメージしたアレンジメントです。未来への出発にふさわしい明るく希望に満ちた色ということで、黄色いチューリップをシンプルな花束にしてみました。
今回は、円錐形に花束をつくるのではなく、ラッピング用のペーパーバッグにミサル麻と花束を入れリボンを結んでいきます。この形ですと、初心者にも失敗なく華やかなイメージの花束をつくることができます。ラッピング用のバッグを選ぶポイントは、クリーム色などを選ぶこと。主役はお花ですので自然で柔らかい色を選んでみてください。

 
橋本貴美子
エッセイスト。毎日放送勤務の傍ら、料理やフラワーアレンジメントに関するエッセイを執筆中。昨年度『りぶる』で紹介した遊学中のメンフィスでの思い出とミートロールのレシピが好評。今月からスタートする本コーナーでは毎月、花をテーマにしたエッセイを連載。

芳谷里佳
フラワーコーディネーター。フランス・ピヴェルディ校にて、フラワーアーティストの研修に参加。その後オランダ、ドイツのフローリストに師事。現在はウェディング、パーティー、レストラン装花、空間装飾を手掛ける。ヨーロピアンアレンジメント教室も開設。

撮影・インプレス 鈴木雅之


最新号へ戻る