手と手

文/橋本貴美子
フラワーアレンジメント/芳谷里佳

 「元気な父とバージンロードを歩きたい」
 最後に私を結婚へと向かわせたのは、こんな単純な思いでした。とても簡単なことなのに、人生で最も難しいことが結婚なのかもしれません。「誰としても一緒よ〜」と諸先輩方はおっしゃるのですが……思えばこれが以前は非常に納得のいかないアドバイスでした。
 旧約聖書のイザヤ書に、「見よ、わたしはあなたをわたしの手のひらに刻み付ける」とあります。これは当時、恋人の名を手のひらに刻み込む習慣があったことから、神様も私たちのことをそのように大事に思っていてくださることを表した言葉だそうです。
 手をつなぐという行為はとても単純なことなのですが、ときにとてつもなくドキドキしたり、その単純さゆえになかなか素直にできなかったり……。
 バージンロードの終着点。祭壇の前で父の手から新郎の手に我身が委ねられる瞬間は、とても複雑な思いがしました。いつまでも離したくない父の手、早く飛び込みたい新郎の手。どちらも大きくて、余りある愛情で私を包み続けてくれるもの。
 そう信じられる大切な瞬間を忘れることなく人生を過ごせればどんなに幸せなことでしょう。
 手に秘められた力を感じた経験の一つに、20代に経験した博覧会のコンパニオン研修の気功術があります。消しゴムの中に入ったつもりで……とか、巨人になったように……とか、少し不思議な研修でしたが、そのなかで驚いたのが手にまつわるものでした。
 静かに目を閉じ、体の中の“気”を手のひらの中央に集めるという課題が出されたのです。
 講師曰く、ここがいちばん気を集めやすいというのです。チャレンジしてみると、手のひらの中央部分が心なしか熱く感じられ、温めた卵をそっと乗せている感じが確かにしたのです。
 手の平から感じるさまざまな感情は、言葉では伝えようのない大切なことを語ってくれているようです。
 コマーシャルにあったように、老夫婦になっても手をつないでいられる関係でいたいものですね。

 

今月のアレンジメント

花材
スプレーバラ、スプレーカーネーション、ホワイトスター、スイトピー、ルスカス、アイビー、ラナンキュラス、ワックスフラワー、ブーケホルダー、リボン

ポイント
今月のアレンジメントは、結婚式で花嫁が手にするブーケです。幸せな2人を象徴するように柔らかな色でまとめたブーケは見ているだけで幸せな気分になれるもの。
ブーケをつくる際のポイントはブーケホルダーにラウンド型にバランスよく花を活けていくことです。バラやカーネーションを中心に小さな花や緑の葉をとり混ぜて半球を描くようにしてみてください。リボンはメインのお花の色に合わせるときれいにまとまります。

 
橋本貴美子
エッセイスト。毎日放送勤務の傍ら、料理やフラワーアレンジメントに関するエッセイを執筆中。昨年度『りぶる』で紹介した遊学中のメンフィスでの思い出とミートロールのレシピが好評。今月からスタートする本コーナーでは毎月、花をテーマにしたエッセイを連載。

芳谷里佳
フラワーコーディネーター。フランス・ピヴェルディ校にて、フラワーアーティストの研修に参加。その後オランダ、ドイツのフローリストに師事。現在はウェディング、パーティー、レストラン装花、空間装飾を手掛ける。ヨーロピアンアレンジメント教室も開設。

撮影・インプレス 鈴木雅之


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