こわいこわいさん

文/橋本貴美子
フラワーアレンジメント/芳谷里佳

 節分には豆まきを行わないと何かすっきりっしない気分になります。
 節分行事はもともと宮中での年中行事。彩色した土で作成した牛と童子の人形を大内裏の各門に飾ったとの記述が、延喜式に見られます。豆をまき、邪気払いをする風習は寺社が行っていた邪気払いの豆打ちの儀式が融合したものともいわれているそうです。
 わが家では、毎年数え年分の豆を母と数えるのが習わしで、子供のころはその数が毎年増えていくのが楽しみでした。母は家族全員分を半紙に包んで記名し、無病息災を願いながら神棚にお供えしてくれました。いつまでも食べないでいると、まるで服用しなければいけない薬であるかのような指令が飛んできます。今思うと、それだけ家族の健康を心から気遣ってくれていたのでしょう。
 人間にはどうすることもできない力を古来、神や邪気の力と解し納得するという風習は万国共通なのではないでしょうか。実はわが家の“しつけ”にもこの“畏怖の念”を利用しています。
 子供との会話に登場する、その“こわいこわいさん”はわが家のクローゼットルームに潜んでいるのです。娘が聞き分けがなかったりすると、実際には声が聞こえるはずもないのですが、「ママの言うことを聞かないなら、○○ちゃんはママがいらないんだね」と、この“こわいこわいさん”がママを連れ去ってしまうのです。
 これも過剰にすると恐怖心だけを植え付けてしまいあまりよくないのかもしれませんが、この“こわいこわいさん”はときによい子をとても褒めてくれるという役割をも担っています。
 私自身も幼いころ、「夕方は魔の神様が通るから早く帰らないといけない」とか「ふざけていると怪我をさせられる」とかいろいろな“畏怖の念”を用いてしつけられたことを思い出します。
 先日も母が孫娘に同じ台詞を言ったときは、なんだかとても懐かしい気分になりました。
 実は懐かしい反面、すこしドキッとしました。何を隠そう、母となった今でも、私はその“魔の神様”がとても恐かったりしているのです。

 

今月のアレンジメント

花材
マーガレット、キャンディータクト、スプレーバラ、なでしこ、毛糸玉

ポイント
今月は外の寒さと対照的な室内の温もりをイメージした毛糸玉を使ったアレンジメントです。毛糸玉のなかにはオアシスを入れて花を活けやすくしてあります。冬の温もりの代表的なイメージとして毛糸がありますが、ほかにも、自分なりの冬の温もりをイメージするものにこうして花を活けてみてはいかがでしょうか。毛糸玉のなかにオアシスを入れるときは、毛糸の間をうまく花の茎が通るように間隔に気をつけて毛糸を巻くようにしてください。

 
橋本貴美子
エッセイスト。毎日放送勤務の傍ら、料理やフラワーアレンジメントに関するエッセイを執筆中。昨年度『りぶる』で紹介した遊学中のメンフィスでの思い出とミートロールのレシピが好評。今月からスタートする本コーナーでは毎月、花をテーマにしたエッセイを連載。

芳谷里佳
フラワーコーディネーター。フランス・ピヴェルディ校にて、フラワーアーティストの研修に参加。その後オランダ、ドイツのフローリストに師事。現在はウェディング、パーティー、レストラン装花、空間装飾を手掛ける。ヨーロピアンアレンジメント教室も開設。

撮影・インプレス 鈴木雅之


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