自衛隊に傾斜 対米支援7項目
第一の仕事は外交努力
歴史論ぜず派遣は問題

■小泉純一郎首相が示した対米支援七項目を、どうみる。
 「私は十分でないと思う。七項目のうち、四項目は自衛隊、二項目は経済、一項目は出入国管理の問題だが、日本政府の最も大事な仕事は第一に外交努力だ。日本は、中東に対して相当しっかりやってきた実績がある。石油の取引だけで付き合ってきたわけではない。日本とイスラムが互いに理解し合おうというベースがあったはずだ。そこは日本と米国で歴史的に違う。これは本来、(田中真紀子)外相の仕事だが、そういうことに関心がないようだから、官邸がきちんと指示を出す必要があるのではないか」

■外交努力のほかに日本がすべきことは。
 「情報収集だ。これまでの積み重ねで、中東からの情報収集は相当できる。湾岸戦争の時も、高い評価を受けたと聞いている。イスラムの人たちも、欧米以外の国とは話し合えるのではないか。そこを飛ばして七項目にいくと、十分ではないという感じがする」  
■自衛隊を派遣してまで米軍を支援する必要はないのか。
 「テロに対してどれだけ言っても足りないほどの憤りは持っている。日米の協力関係は続いているのだから、支援するのはその通り。ただ、米国の対応が報復なのか戦争なのか、少し時間がたって冷静になれば、何だったんだという思いが出てくるのではないか。戦争だったら(憲法で禁じている集団的自衛権の行使にあたり)日本は参加できないでしょう」  
■一時、自衛隊のイージス艦をインド洋へ派遣しようとしたが。
 「国会では、周辺事態法の時も、中東まで出ていくことは否定的にとらえられてきた。そうした議論を急に乗り越えていくことは、簡単ではない。少なくとも現行法では派遣する根拠がない。小泉首相は後で国民に説明すればいいと言う。しかし、靖国神社の参拝でも、ともかくお参りして、後で説明すればいいと言ったが、後で説明したとは聞いていない。支持率が高いとはいえ、後で説明すればいいというほど、一つ一つの問題が首相に任されいるわけではないだろう。相当慎重にやってほしい」  
■しかし、自衛隊の海外派遣を前提に議論が進んでいる。
 「自衛隊は憲法九条に書かれなくても自然に存在するとして、自衛隊は誕生して育っている。しかし、(憲法や自衛隊に関する)過去の経緯、歴史を全然論ぜずに、いきなりそうした(自衛隊を海外派遣する)議論にいくのは問題があるのではないか。七項目は自衛隊に傾斜しすぎている。もっと日本がやるべき仕事があるのではないか。邦人保護と称して、かつて軍隊が外国に行って大変なことになっていったという歴史もある」  
■小泉首相は自衛隊を危険が伴う所へも派遣すると発言した。
 「私が官房長官の時に(カンボジアへ)国連平和維持活動(PKO)で自衛隊を出したが、若い人を出した親や政府の責任者は(万が一のことを考え)眠れなかった」  
■アーミテージ米国務副長官は「ショー・ザ・フラッグ(日の丸を見せろ)と言った。
 「そういう期待は、米政府の中には、あるだろうが、自衛艦に日の丸を掲げて走っていくのだけがショー・ザ・フラッグじゃない」
(聞き手・塚原啓輔)

東京新聞10月2日(火)朝刊に掲載