■小泉首相は当初、タリバン後のアフガニスタンの政権作りへの関与に意欲を示していた
 「政権づくりは歴史的にその地域と良い関係にあった人たちが、求められて参加するもので、日本はその環境整備には役立てるかも知れない。ただ、日本のように利害のない第三国の関与が好ましいとの考え方はその通りだが、(自衛隊艦隊派遣などにより)第三国と見られているのかどうかという問題が生じている」
■アフガンの復興支援の成功のカギは何か
 「タジキスタンなど中央アジアとの良好な関係を通じ、アフガンが困っていることを察知し、その克服を手助けすることが大事だ。気になるのはパキスタンで、この国の安定は非常に重要だ。しかし、核実験全面禁止条約(CTBT)への署名を求めて行ってきた経済制裁を、(小泉内閣が)わけのわからないうちに停止してしまったのは、もっとけじめのつけ方があったはずで残念だ」
■テロとイスラム教の関連を指摘する議論もあるが、外相当時に「イスラム研究会」を作った理由は。
 「イランのハタミ大統領が『文明間の対話』を提唱した国連演説(1998年)に影響を受けた。中東と日本の歴史的交流は千年以上もさかのぼる。しかし、琵琶やガラス器のように交流を伝えるモノは残っても、人間の営みとしての歴史、知識の集積が少ない。そこで外務省に局横断の研究会を作った。イスラムの教えは暴力的ではなく、テロとは全く別だ。今(米軍などが)やっていることは、がん摘出のための外科手術だが、健康管理をきちんとしていれば、百歩譲ってがんの遺伝子があったとしても発病はしない。日本は手術を行うタイプの国ではなく、健康的生活を支援すべきで、これは手術以上に意味がある。手術できない者は意気地なしで非協力的だと言われるんじゃないかと気にする必要はなかったはずだ。(小泉内閣の外交は)思いつきが目立ち、体系だっていない」
■中東問題をどう見るか
「今年1月に中東を歴訪し、各国のパレスチナ問題への強い懸念を感じた。米国がクリントン政権当時は米国仲介による和平への期待感があった。今は絶望感さえある。テロは貧困だけでなく絶望感も発生の条件だ。根元的問題の理解からテロ撲滅を始めるべきだ」
(聞き手 伊藤俊行)

読売新聞12月8日(土)朝刊に掲載