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未消化に終わった失業率の政策論争
河野 その高いレベルの失業率に対する政策について、野党側からも具体的な論争もほとんどありませんでした。
岩見 小泉さんはテレビ効果を見込んで徹底的にテレビを使いました。
河野 そのテレビも田中外相がベトナムで春巻を食べただとか、ワイドショー的で投票行動に結びつきませんでした。
岩見 一方でほかの野党党首はテレビに出演してもさっぱり盛り上がらないし、なんとなく気勢も上がらず勝敗がついたとも言えます。神奈川の選挙区の候補者は史上最高の129万票、東京の保坂三蔵氏も160万を取りました。
河野 保坂さんは、すでに政治的な実績はありましたが、神奈川県の場合は知名度も政治歴もゼロでほとんど小泉さんの主張通りで押し通したわけです。
岩見 ところで河野先生は、小泉内閣の構造改革は大枠としてはオーケーですか。 河野 大枠としては改革は必要だと思っています。構造改革については、自民党は今度初めて言っているのではなく橋本内閣の頃からその必要性については同じことを言っていました。
小泉首相の選挙はブレア英首相流?
岩見 やり方によってスローガンは同じでも血の出方が違う訳です。小泉さんは歴代総理に比べて、徹底度が高いということでしょう。選挙運動の小泉発言を聞いていると、自民党党首として、かなりはみ出し部分がありましたが、これが小泉人気の1つの秘密だと思いますね。
河野 今年の選挙で圧勝したイギリス労働党のブレア首相は、選挙に勝つためにはいかにして従来の支持者や団体を切り捨て、新しい分野に呼びかけることができるかによると言っていました。小泉さんもそうですね。
岩見 ドライというかナウいというかですかね。(笑)
河野 そこがこれまでの総理・総裁にはできなかったことです。
岩見 やられてみると、なかなかユニークですよね。それを小泉流というのでしょう。
河野 日本の社民党も、労組の構成員など従来の支持者はほとんど民主党に行ってしまってすでにいないのに、過去の支持者とのしがらみとこだわりが残っていました。それに比べると自由党はしっかりしていましたね。
岩見 自由党は倍増しましたからね。数は少ないですが自由党に対する好感度は、タレントを一切排除し、小沢さんの主張が一貫していて好感が持たれたことだと思います。何の組織もないのに比例区の得票数は共産党とほぼ同じでした。
河野 社民党の土井さんは小沢さんの反対側で明確なメッセージを送り続け、両極で同じように一定票は取ると思っていましたが、自由党の方は、パイの大きな保守の部分から取りますが、社民党はパイそのものが小さくなっていますので。
岩見 神崎さんの公明党は徹底して戦ったと思います。比例区の800万票は記録的でしたね。とにかくよくわからないのは、今回は自民党の党としての戦い方です。いわゆる純粋な意味での自民党に投票としたというよりは、〃小泉党〃という仮想現実みたいのがあって、そこに引きつけられて一票を入れた有権者がいるんじゃないですか。小泉さんはある種の幻想をふりまいている感じがしましたね。
経済再生策には不安が募るだけ
河野 そうは言いますが比例区候補者の得票を見ると、従来の自民党のよってたつ基盤も強かったですね。いままでもこんな風に思っていても負けることもあったんですね。まあ戦術論はいろいろありますが、問題は政策です。小泉さんの主張は、大臣を経験した厚生行政とか郵政とかは非常に詳しいですが、わかっていない分野については、非常に危なっかしく見えます。
岩見 景気や金融については特にそうですね。
河野 総理の演説を聞いていると、国債の新規発行は30兆円をビタ一文オーバーさせないと言っていますが、経済は生き物ですから、そんなことで果たして乗り切れるかどうか不安があります。
岩見 『構造改革なくして景気回復なし』と繰り返し呪文のように唱えれば唱えるほど不安が募りますね。にもかかわらず小泉人気だけはあるから、矛盾したねじれた雰囲気で日が過ぎています。
河野 小泉さんの周辺にいる人たちの学者的無責任さは困ります。どうも失業や倒産も仕方がないではないかというかんじはいけません。
岩見 第2の不安は田中外相です。日本の統治機構が、田中大臣によって引っかき回されている感じですね。あの人は組織のイロハが全く分かっていないからひどいですね。
充分な議論と的確な指示を
河野 外交政策そのものも滅茶苦茶になってしまいました。アメリカでもブッシュ大統領は、1番近いメキシコとかカナダを大事にし、新大統領が面会をしたりあるいは最初に訪問する国は、お隣さんから始めています。ところが小泉さんは、教科書や靖国問題で中国や韓国からあれだけ言われても、お参りしてから説明すると言うのは通らない話です。
岩見 田中外相の見解は就任以来2度、3度と変わっています。時には総理大臣を批判したりしていましたが、この人には上下の感覚がないですね。総理大臣に任命され、総理大臣を補佐するという感覚がないのは恐るべきことです。
河野 ともあれ今、外交がほとんど機能していないことは情けないことです。日中、日韓の外交をきちんとやろうと思うなら、好き嫌いで人事をいじったりしては駄目。これまでの先輩のやってきたことをもう1度勉強すべきだと思います。私は近隣諸国の思いをもう少し考えなければならないと思っています。
岩見 しかし総理大臣がああいう考えでいくと言い切って、そこにまた田中外相というトラブルメーカーが出てきて、問題をさらにややこしくしていますね。
河野 本来ならば、まず外相は日中関係、日韓関係の外交上の問題を充分説明した上で首相の決意を良く聞いて、外相会談でできる限り処理すべきことです。
岩見 中国側を誠心誠意説得してどうしても不調ということで帰って来たというなら納得できますが、そうした努力がされていないことは許されませんね。
河野 京都議定書問題も結局、日本が最後にババを持たされました。
岩見 ボンの会議は急展開しましたね。
河野 あれは日本が譲歩したわけです。
岩見 川口環境大臣はよくやっていますね。
河野 能力はあるし、立派な人ですよ。だがこの人にちゃんとした指示が出ているかどうかが問題です。
岩見 経済、外交の両面で小泉さんに本当の秘策はあるのでしょうか。
河野 そこが図りかねるのです。
岩見 小泉一色のように見える政局ですが、よくよく見ると日本の政界はガタガタですね。
危機的に見える政界の勘違い
河野 みんな勘違いだと思いますね。小泉さんも、もしかしたら勘違いかもしれないし、鳩山さんも菅さんもみんな勘違をしているような気がします。
岩見 重ねて言いますが勘違いの最たるものは田中外務大臣です。政界はここで頭を冷やさなければいかんですな。
河野 しかし、冷やしている間に経済も冷え冷えとしてしまうおそれがあります。アメリカと同じようにITが駄目だとなると相当深刻です。
岩見 いつの時代もブームというのは気をつけないといけないですね。どこか無理があるんですよ。
(7月31日対談)
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