景気問われる閣僚の力量=河野
自民・民主の人事に幻滅=岩見
  

岩見
 なんと言っても日朝首脳会談には驚かされました。小泉総理はある種の賭けと腹をくくって出かけたのでしょうか。
河野 訪朝の直前と直後に歴代の総裁経験者に対し、経緯の説明がありました。帰国後に拉致問題は別にして、事前の情報・分析は正しかったかと尋ねたところ、正確だったとの返事でした。先方もトップまで同じように話が上がっていたと説明し、外務省を信頼しているようでした。
 森前総理も在任中に北からの打診を受けて、中川秀直前官房長官をシンガ ポールに派遣して話し合ったようです。しかし当時は、 政権の支持率が下降し、国内にも問題が山積して動けなかったのです。交渉の相手はそれまでの人たちではなく姜錫柱(カンソクジュ)氏に代わっていたようです。

軟化示した姿勢 見て強気に交渉日中首脳会談以来
 今回の下交渉をした田中局長もこの人と会っています。私の大臣時代、バンコクで北朝鮮の白南淳(ペク ナンスン)外相と初の日朝外相会談をやりましたが、 当初は少し進むかと思いましたが、まだ当時は北が決断するところまでゆきませんでした。その後アメリカがクリントンさんからブッシュさんに代わり、強硬な態度に出たり、金大中氏の任期が来ることもあって北が前向きの姿勢となり、外務省もチャンスと見て強気で下交渉をやったようです。
岩見 日朝交渉は「三党共同宣言」(90年)以来もう10年を超えて断続的に続けていましたよね。
河野 拉致の問題では何度も衝突してその都度会談は中断しましたが、双方が知恵を出して赤十字 会談などに戻り、地道に交渉を重ねてきたものです。 今回の小泉さんは機を見 て、多くの人とは相談せず、よし行くぞと決断したのでしょう。事後通告を受けたアメリカもびっくりした ようです。
岩見 だいぶ疑っている節もあり、ツムジを曲げているとの説もあります。
河野 アメリカは今イラクで手一杯ですから、余り気を散らさないでという気持ちはあるでしょう。
岩見 拉致問題は相当尾を引きますね。総理は8人が死亡し、生存者は5人ということを行く前に知っていたんでしょうか。
河野 帰国直後に会った際、知っていて家族に会わずに出かけたのかと聞いたところ、「何人かの安否は言うのではと思ったが、ここまでとは思わなかった」と話していました。
岩見 こう言う場面になると金日成とは何度も会っている宇都宮徳馬さんのような政治家がいなかったのは残念ですね。
河野 今度はこれまではまったく見えなかったものが少し見えてきました。しかし見えたものがこの悲惨な状況ですからね。
岩見 気になるのは北朝鮮という国は変わるのかどうかということです。拉致を認めて援助さえ得られればまた元の殻に閉じこもるのではないかという見方もあります。もしそうだとするならば、今回の小泉さんの訪朝は金王朝の延命に手を貸すことになりかねませんね。ほおっておけば自滅していくのにという指摘もあります。
河野 そういうこともあると思います。しかし今のままならノドンやテポドンをいつぶっ放すかわからない事ですから、交渉を始めて話し合うルールの中に取り込んでいくことが大切でしょう。政治体制は変わらなくても経済の仕組みが変わる可能性はありますすね。小泉さんは、金総書記は国際政治に精通し外国の動きを知っているようで、彼はテレビで見るより闊達でよくしゃべり、考え込むタイプではなさそうだと言っていました。
岩見 すると、中国ほど劇的に変わらなくとも、少しづつは変わってくるかもしれないですね。
河野 この体制ではだめだ、体制を変えろと言っても、今の金体制と交渉する訳ですからね。
岩見 いっぺんにパーフェクトゲームとはいきませんね。小泉さんを今回の訪朝に意欲を持たせてのは韓国の金大統領だそうで、何回も勧めたといわれています。
河野 首相との会談で、総裁経験者の中でも、中曽根さんはブッシュ大統領、森さんはプーチン大統領の名をあげてよく相談するように勧めていました。確かに金大中さんは森さんにも小泉さんにもトップ会談を勧めてきました。理由はあの国では下の人では何もこれまでと違った話は出来ないし、トップなら拉致も経済協力もワンパッケージで話が出来るというのです。
岩見 これまでの情勢から、機は熟してきたということですね。先日宮沢さんは、先生ならどうしましたかと聞いたところ「まあ、行ったでしょうなあ」と言っていました。(笑い) 。小泉内閣の支持率が跳ね上がりましたが、あまりにも上げ幅が大きいのでちょっと意外な気がしました。
河野 新聞やテレビが拉致の問題で北朝鮮や外務省をあれだけ非難していても、行った小泉さんだけ支持率が上がりました。

日中首脳会談以来30年ぶりの興奮
岩見 国と国との問題解決のための首相の訪問は、30年前の田中訪中以来ですからね、本当の外交らしい首脳会談で国民がこんなに興奮したのは。
河野 拉致家族の心情は深刻ですが、国際的に今度の訪朝に対しては前向きの評価です。
岩見 日朝ショック後の人事は自民、民主両党でありましたが、自民党役員の留任にははっきり言って幻滅を感じました。経済は非常事態、外交も非常に多面的で重要な場面というのに、その2つのポストにまだ民間人が座っているのはおかしいじゃないですか。
河野 景気・デフレ対策を求める声が大きくなり、総理本人も言い始めたところで次々に色々なことが起きて国民の目がそちらに向いてしまう。デフレ対策は具体的になかなか進まない中の内閣改造でしたから、せめて人事で今後の政策を明確にすべきでしたが、経済閣僚人事にもう少し策をめぐらせるべきでした。
岩見 柳沢金融担当相をはずし、竹中経済財政担当相に国の経済のことを丸投げしたようなことをしていいのかとみんな思ったでしょう。


大勇会の鈴木恒夫(中)森英介両代議士と

納得できない 経済閣僚人事
河野 竹中さんは、知識はあるでしょうが、いざ実行する時に、党内に説得力がないですね。金融庁をわざわざ分けて独立させたのに、また一緒にするのは納得できません。
岩見 こういう場面ですから本当に力のある実力者も入れるべきでした。竹中経済財政相の兼務とは何ごとですか。小泉さんは柳沢さんをクビにする前に、不良債権処理など金融政策について自分の意見を言うべきでした。そもそも昨年4月の小泉内閣発足時に女性閣僚5人を入れましたが、何でしょうね、小泉人事の基本とは。
河野 小泉さんは、大事なところは閣僚も審議会も民間人に任せていてどうも責任の所在がはっきりしません。政治家は選挙で責任を求められるのです。
岩見 民主党の代表選と人事もパッとしませんでした。鳩山さんの神経というか感性がわからないです。世間や党内の反応に鈍感というしかないです。
河野 代表選では結果的に中野さんの選挙前の判断が鳩山さんが僅差勝ちした要因にはなりましたが、だからといってそれを幹事長に押し込むとは露骨でした。
岩見 民主党もこれでは政権政党にはなれませんね。小泉さんは、日朝人気と鳩山さんのつまずきでゆとりを持って人事を行い、そして解散をもくろむ…。
河野 臨時国会冒頭の解散という声も山崎幹事長の留任ではそれは無理でしょう。それより27日の衆参7つの補選が大変です。山形県連の意向はは不戦、神奈川も千葉も予断を許しません。鳥取、大阪も本部と府県連が分裂し、新潟は高齢の元小千谷市長が党公認で自信が持てないし、福岡も山崎幹事長と古賀前幹事長の確執があって苦しくなっているようです。
岩見 小沢自由党党首は全部勝つと随分気負っているようですよ。自由党単独候補はいないのですが、野党統一候補という位置付けをしてミニダブル選挙だと言っています。訪朝調査団の報告次第で、まだ拉致事件と国交正常化交渉は目が離せませんし、デフレ対策のほか郵政、道路、金融問題など難問が山積みで、河野先生の完全復帰以外明るい話題がない政界ですが、とにかくがんばってください。

(10月2日対談)