
| 波乱・激動の一年でした=河野 経済・外交に指導力必要=岩見 |
岩見 2002年も間もなく暮れますが、河野先生にとっても日本の政治にとっても波乱、激動の年でした。とくに経済、外交は大変な難所に差し掛かっておりますが、一年を振り返って見てください。 倫理観ない社会が心配 河野 私にとって前半の6ヶ月は病との闘いでした。初めて真剣に人生とか生命と向き合ってみて、多くのことを考えさせられました。 そして後半は体調を整え、秋の臨時国会に臨みました。しかしこの国会も低調でした。振り返ってみると、年初から議員の辞職が相次ぎ、優良企業と言われた会社の不祥事が次々と明るみに出て、倫理観もない無秩序な社会に陥っているのが現状だと思います。 本来政治が果たさなければいけないのは、デフレを終わらせる政策だったのに効果的な手も打てないうちに、新たに起きる別の問題に関心が移ってしまうなど、益々事態は悪くなるばかりで国民、とりわけ中小企業にとっては不安一杯の年末になりました。 外交も国内世論と国際的な安全保障との考え方との大変なギャップを埋めることもできずにいます。続発した不祥事で外務省に対する不信感も背景にあり、外交は閉塞状況のままの一年となりましたね。 岩見 ご自身は気力、体力とも手術前よりはるかに充実されているように見えますが…。 河野 手術前に比べたらいいですし、少し若くなったような気持ちさえしています。 岩見 経済にしろ外交にしろたくさんのテーマがありますが、9月の改造後も誰が主たるイニシアチブを取るかということで依然としてモヤモヤ状態が続いています。自民党内にも外務、経済・財政担当の大臣が民間人ではまずいという議論が出ています。私も出来れば責任を持てる力のある政治家を当てるべきだと思います。 河野 経済、外交、さらに教育と重要ポストの3人は民間人としては立派でも、政治的判断をすることには慣れていないと言われています。大臣は役所の人材についても能力を良く知っていないと上手に政策を進められません。総理大臣がこれといった政治的判断を示しませんね。 先日会った森前総理は、自分の時は隣に宮沢さんがいてくれて、野党の難しい経済の質問でも、宮沢さんが耳元でささやいてくれたが、今の内閣はどうかなと言っていました。 岩見 与党が今、民間人の大臣の力をまったく評価していません。 河野 小泉総理は、一内閣一閣僚、適材適所と公約しておきながら環境リーダーシップなく無責任な丸投げ庁長官として入閣させた川口さんを外相に横滑りさせ、谷垣国家公安委員長を企業再生委員長にするなど、どういう能力を買って適所に据えたのかわかりにくいですね。 岩見 手軽な人事に見えます。松野頼三さんが、小泉総理は経済と外交は天領だと思っているようだが、それならきちんと仕切るべきだと言っていました。 河野 その2つともどうも苦手に見えます。加速プログラムも表現を変えているだけで、言葉の遊びみたいでインパクトもなく、市場の反応もなくなりました。 岩見 銀行の国有化も繰り返し唱えているため不安が先行し、どう着地させるかを示してもいません。 河野 民間で出来ることは民間でと言いながら、銀行の国有化や企業再生の選別を官でやるというのもどうですかね。 岩見 道路四公団の改革問題も、半年も議論した挙句に委員長が辞めるという事態は政治の責任だし、とにかくロスタイムが多いです。 河野 あの委員会の人選は小泉さんがやったわけで、問題がありました。最初から技術的な面から論議する人と、政治的な考え方を優先する人がいるわけで、結論を一つにするのは難しかったはずです。膨大な借金やファミリー企業の問題はもっと専門家に集中的にやらせるべきでしたね。 岩見 猪瀬、松田両氏らと今井委員長らを両天秤にかけて一方の結論だけを採用する政治手法が混乱を招きました。 河野 諮問委員会は中曽根内閣時代に多かった形式ですが、問題もありました。 リーダーシップなく 無責任な丸投げ 岩見 旧国鉄改革は中曽根さんがリーダーシップを発揮してやりましたが、小泉さんの丸投げは無責任です。結局、今井さんが辞任することで最終答申の値打ちは下がりました。 河野 道路など公共事業はだめだという説は、膨大な予算を政治家やゼネコンが横取りすると言うのです。ファミリー企業は論外ですが、税金がきちんと道路造りだけに使われていれば良いと言うのです。 岩見 どっちにしても道路公団のやり方に無駄が多いことは事実ですが、国民にとって大事な仕事でもあります。地方の担当者の話を聞くと、道路の造成に当たって山にぶつかったら迂回すればよいのにやたらとトンネルを掘りたがるんだそうです。 河野 イージス艦を買えば、今度はそれを使いたくなる話に似ていますね。 岩見 ところで北朝鮮問題がまたまた複雑になってきました。 河野 とにかく壁があって中が見えない国ですから、過去に何をやってきたのか窺い知れません。イエメン沖のミサイル輸出問題が明らかになりましたが、現在もこんなことをしていたのに、壁の中ではっきりと見えてきません。チラッとでも見えたのは日朝首脳会 談の時だけでした。あの会談がなければ拉致の事実も5人の帰国もなかったでしょう。トップ会談をやったからこそ金総書記が拉致を認めて謝罪をし、5人も戻ったのです。 要は話し合いのテーブルについて向こうが見えるようにすることが大事です。今のところ交渉再開の見通しは立っていないようですが、北朝鮮がこちらの要求に応じなくとも、どうせ食糧難が迫っているのだから、それまでがんばるだけだというやり方だけが唯一の方策でしょうか。 岩見 ピョンヤン宣言では家族も返すとうたっていますが、この対立はデリケートですね。相手をどこまで信用するかですか。 河野 交渉をする以上信頼関係の醸成が必要です。首脳会談の直後、一時的に緊張が緩み日本人妻の一時帰国まで話し合われたあの時に、政治がどうにかすべきでした。 ここに来て一番頭を抱えているのは韓国でしょう。太陽政策についての評価によっては、対北強硬路線に変わり、一方大衆の反米感情も強くなりそうです。日本も米国と一緒に真っ向勝負という官邸に正確な情報が入っているのならいいのですが、感情だけでは話し合いは進みません。 岩見 かつての金大中事件は政治的な話し合いで決着し、法的なけじめはつけませんでした。そして後に韓国の大統領が謝ってきましたね。金総書記は今回謝って見せるなど、外交のテクニシャンに見えます。 河野 あの首脳会談を進言した段階では外務省も良かったと思います。 周辺の国際環境を考えれば、千載一遇のチャンスだったと思います。 岩見 こうなるとお互いの我慢比べで、にらみ合っている状況ですが、この状態を変えるには小泉さんがもう一度訪朝するなど、日本が何か手を打つべきでしょうか。 河野 今の国内世論を考えたらとてもできないでしょう。今度のスカッドミサイル事件で、さらに悪い雰囲気になっています。 岩見 とにかくがんばれという世論はあるものの、交渉は失敗だったという声も出始めています。 強硬一点張りの 米国に自制促せ 河野 ブッシュ政権は北を悪の枢軸と名指しし、米国の戦略の中に核拡散の動きに対して先制攻撃をかける構えを見せていますが、これまではやらないと言っていた先制攻撃にも言及した時、異も唱えずに丸投げするのもどうでしょうか。 岩見 双方とも模様見の段階に入ったようですね。北の本当の狙いは経済協力ではなく、アメリカの攻撃を回避して金体制護持を図るため、利用価値のある日本に期待しているとの見方もあります。 河野 ポツダム宣言受諾に当たって日本も国体護持を最後の主張としましたが、北も考えているかもしれません。もつれた関係をほぐすのは本当に難しいと思います。かつて一時もつれた米朝関係にしてもカーターさんが出かけていって枠組みをつなぎ直しましたが、同じような事ができるかどうかです。このところの政府の欧米に対する姿勢と韓国や北朝鮮、中国に対する姿勢が違い、ダブルスタンダードで発言の端々に差別の響きさえあるのが気がかりです。一般的に言って交渉とは相手を信頼する気持ちがなければ成立しません。今回も金体制と交渉するのであって悪者とやるという姿勢では危ういと思います。 岩見 そりゃ、お互い約束したことを守らなければ誰でも怒りますね。大変な一年でしたが、来年もご活躍ください。 (12月12日対談) |
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