小泉総裁再選は民意反映=河野
行革で煮え切らぬ民主党=岩見
 

岩見
 話題の多い政局でしたが、順を追ってお伺いします。総裁選では小泉さんをベターだとして支持されましたね。
河野 これまでは小泉さんの経済政策やブッシュさんに偏りすぎる外交のスタンスが心配だったので正面から批判した一人でした。それは党内にはベストの候補者がいると考えていたからです。しかし候補者が出揃った段階で、結局小泉さんか亀井さんのどちらが日本の総理大臣にふさわしいかを熟慮し、経済だけでなく、外交、国際関係を考えて小泉さんがベターだと判断しました。
岩見 一時期河野擁立論がかなり広く言われていましたし、先生自身考えた場面もありましたか。

譲歩をしてまで 籠には乗らない
河野 間接的に立候補の働きかけを受けたり、私の出馬に賛同するとはっきりと言われた方もいました。しかしこの人たちの意見の多くはこれまでの私の主張と相当な隔たりがあり、譲歩してまで支持を受けるべきではないと判断して不出馬を決めました。
岩見 亀井さんは割と早い段階から反小泉の統一候補として河野さんか堀内さんを擁立したいと言っていましたが、河野さんと主張も手法も合わないでしょうし、はっきり断ったのはよかったと思いますね。総裁選の結果は予想と違って、地方党員の票が流れを作りました。
河野 今度の結果を見て言いたいことが二つあります。一つは自由民主党は特別の利益を追う人たちの集まりではないということです。反小泉の人たちに言わせると、新聞の世論調査では小泉さんの人気が高いけれども職域党員が多い党員投票では違う結果が出ると言っていました。結果は世論調査とほぼ同じパーセンテージで票が出ました。つまり自民党員も一般の人たちと同じ意識を持っていたことがはっきりしたのです。
岩見 140万人の投票ですから、小型の国民投票みたいなもですからね。議員は小泉再選を折り込み済みで投票したということですね。
河野 国民一般の支持率を反映した妥当な結果だったと思っています。もう一つは今度の選挙では金が動いたという話が一つもなかったことです。かつてはニッカだのサントリーなどと言われたり巨額な金が動いたとして、政治家の倫理が疑われたこともありました。
岩見 前回の総裁選挙も余り金が動いたという話は聞きませんでした。
河野 段々と浄化されて来ているということですね。自民党が変化して浄化が進んでいることの証です。
岩見 いいことですね。勝負の結果に4人とも何となく納得しているように見えましたね。
河野 前回は4人全部が新人で、それぞれが自分の主張をはっきりさせて戦いましたが、今度は3人が1人の現職を批判する選挙でした。本来総裁選は品格のある戦いが大事です。
岩見 やはり4人を並べてみると小泉さんにはある種の貫禄がありました。
河野 総理の椅子が人を作ったのでしょう。

衝撃的だった安倍氏の抜擢
岩見 テレビ番組でも一強三弱と見えました。選挙の後も安倍幹事長の抜擢など党と内閣改造人事も衝撃的でしたね。選挙後小泉さんは挙党体制を口に出して言っていましたから、3人のうち1人ぐらいは使うのかと思っていましたが…。
河野 自民党には人がいないと言われましたが、今度の人事を見ると自民党には人材がいることが国民に分かったでしょう。しかも良く訓練され、縁の下で経験を積んできた若い人材が沢山いるということがはっきりしました。民主党も若手はいるでしょうが、責任ある立場での経験があまりありませんから、良く訓練された人材という面で大分違うと思います。
岩見 若い安倍さんは国民に好感度の高い人ですが、幹事長として不安はありませんか。
河野
 確かにキャリア不足ではとの声もありますが党と内閣の調整は幹事長代理に久間章生さんという、これまで麻生さんのもとで政調会長代理を務めた練達の人が起用されています。
岩見 安倍さん自身も官房副長官をやり、随分貴重な経験をしていますね。
河野 党内は小泉さんが安倍さんを幹事長に起用しても違和感もなく、いいではないかという声が圧倒的ですね。
岩見 キャリアからいえば安倍さんは当選3期です。これまでも意外なことを打ち出してきた小泉さんでないと出来ない人事でしたね。
河野 安倍さんは49歳ですが、これまでに田中角栄さんなど47歳で幹事長になった人もいます。
岩見 普通の状態の自民党では考えられませんね。
河野 10年程前は自民党が野党に転落して、党内にショックがあって河野総裁が誕生しましたが、安倍さんの登場は私の時とは少し違うと思います。
岩見 小泉さんは今度の選挙は大変に大事だと思っているようですね。
河野 先日会った時も今度の選挙は、どうしても勝たなければならない。そうすれば来年の参院選も勝てるだろう。それから3年間は選挙がないから仕事に全力を入れられる。だから党が一致協力して戦って勝たねばならないと言っていました。
岩見 すごい割り切り方ですね。前回の総裁選では田中真紀子を使い、今度の総選挙では安倍さんをつかんだわけで、普通の人では
頭で分かっていてもなかなか実行できませんからね。後の閣僚人事をみてもニューリーダー育成内閣の性格が強いですね。

新しい人材の右傾化が心配
河野 ただ自民党の新しい人材はすこし右寄りですね。軸足を右足に置いているように思います。
岩見 そこを野党が突いてきますね。
河野 今度の閣僚の中にも右寄りに見える人がいます。小泉さんが意図的に起用したのか、それとも国民の気持が小泉さんをして舵を右に切らせたのかはよく分かりませんが、進路は少し右に振れている感じです。
岩見 それと民間閣僚3人ですが、党内からあれだけ民間閣僚はまずいと注文がついていたのに、小泉さんは相当頑固ですね。川口外相は代えるべきだと私は思っていましたが…。
河野 しかし外務大臣は、能力も党への足場も大事ですが、長くやることによる国際関係上のメリットが大きいと私は思っています。
岩見 自民党の選対では、今度の選挙は小泉・安倍の人気が頼りだが、現在の244議席を維持するのは全般的にみてなかなか難しいと言っています。
河野 私も危機感を感じています。個人的な信頼で支持してくれる人はあっても、自民党だから支持するという人は減っているように思います。この1ヶ月の総裁選から党人事、内閣再改造のインパクトはかなり強かったが自民党の支持率がこのまま続くかわかりません。
 民主、自由両党の合併にも危機感を持って、自民党ががんばれば現状を維持することは出来るでしょう。2党の合併は民主党の中で菅・鳩山が対立しているところへ自由党です。社民連出身の菅氏と自民党の幹事長時代、権力的に財界に巨額の献金を求めたり、団体を利用する選挙をやり、そして党内でも右寄りの人だった小沢氏で本当に一致するとは思えません。
岩見 小泉・安倍人気と、民主、自由の衝突みたいな様相になってきましたね。選挙の感じとしては、小泉か菅かということで分かりやすくなったように見えますが、たとえば行政改革で小泉さんを批判する民主党も、支持基盤の関係からいざとなると煮え切らない態度です。今後そうした民主党のウィークポイントをついて充分議論がされると思いますが、それでも自民党にとってそう楽な選挙とは言えませんね。
河野 自民党が政権政党であり続けるには、ここで絶対民主党に負けてはいけないと小泉総裁と話をしました。
岩見 まあ自公保3党を合わせて過半数を取れないはずはない。それはまさしく地殻変動みたいなものですからね。そういうことにはならないでしょう…。

重い国会議員の肩書きを再確認
河野 国会議員になるには10万人の有権者に名前を書いてもらわなければいけません。それだけ国会議員の肩書きは重いのです。とにかく目の前の選挙をがんばります。
岩見 ご健闘を祈ります。

(9月25日対談)