先制攻撃に正当性はあるか=河野
盧武鉉ノムヒョン政権で太陽政策続く=岩見
 

河野
 私は先日、長年の友人、金大中大統領が5年の任期を終えて退任されるので、青瓦台と呼ばれる韓国大統領府に出向いてご苦労をねぎらいました。金大統領は良好な日韓関係を構築する為努力された政治家で、その指導力には敬意と感謝を表したいと思いました。その努力は日本側の数倍だったと思います。
岩見 後任の盧武鉉(ノムヒョン)大統領も太陽政策など金氏の路線を継承するそうですね。しかし現在ある「北の脅威」について小泉さんの説明が乏しく、外務大臣もはっきりしないですね。

北とイラクは分けて対応を
河野 北の脅威については、事実をしっかりと見極める必要があります。過大でもなく過小でもいけません。一部には北朝鮮問題があるから米英のイラク攻撃を支持する以外の選択肢はないという声もありますが、2つの問題は分けて考えるべきです。イラクの問題は目的と方法が混同されています。米仏が厳しく対立し、全く正反対とマスコミに取り上げられていますが、両国の目的は同じなのです。アメリカは力で素早くやろうとし、フランスは時間をかけてやるべきだと主張していて手段の違いだけなのです。シラク大統領の演説でも、目的ははっきりしています。その目的の達成のためにブッシュ大統領の力の行使以外の方法を主張しているのです。
岩見 カウボーイと文化人の違いで話がなかなかかみ合わないのでしょう。
河野 首脳同士が会って話をするのがもっとも大事な基本動作なのに、これまでにブッシュ大統領はフセイン大統領と全く会ったことはないでしょう。
岩見 最初からならず者と決めつけてかかっていますからね。
河野 独裁国家はトップがうんと言わない限りどうにもなりません。金正日と会わない限り北朝鮮の問題は一つも解決しないのと同じです。
岩見 先日は総理、総裁経験者が官邸に招かれ、小泉さんからイラク問題について意見を求められたようですね。
河野 中曽根、橋本、森の各元総理は日米同盟こそが大事だと進言していました。私は先制攻撃に正当性があるのか真剣に考えるべきだと伝え、もしそれが許されるなら世界中が軍拡競争になり、力の強い国がよその国を制圧することもあり得ます。先制攻撃を絶対しないということが世界の秩序と安心感を作ってきました。百歩譲って先制攻撃の必要性があるというならば、国連のコンセンサスが必要だ。それがないままの攻撃を日本が支持することは反対だと伝えました。
岩見 OBの皆さんの反応はいかがでしたか。
河野 中曽根さんは「日米同盟を考えればそんなことをいっている場合じゃない」としきりに言いましたね。私はさらにアメリカが単独で攻撃したらEU内部に亀裂が残ります。アラブ諸国の反米感情が強まり米英の国内だって深刻になり、その結果、経済が悪くなって日本にも類が及ぶかも知れないと言いました。宮沢さんはイラクに圧力をかけるというから支持すると言ったが、戦争をするというなら話は別だというわけです。

脆弱ではない日米安保条約
 橋本さんと森さんは日米同盟の重要さと北朝鮮問題が重要だと主張しました。しかしイラク問題を支持しないといっては北朝鮮の脅威から守られないという程、日米安保はあやふやなものでしょうか。これまでも日米は京都議定書や鉄鋼のダンピング問題でも米国と対立して激しくやり合っていますが、それが日米安保に影響するとは思えません。
岩見 亀井静香さんや古賀誠さんも先生の考え方に近いですね。
河野 先日の神奈川新聞には、攻撃反対の「反戦4人組」と書かれました。河野、宮沢は理論反戦派で、古賀、野中は感情的反戦 組というわけです。
岩見 最終的にノーと言うかどうかは別として、もっとギリギリまで色々と粘ったり努力しなければ駄目ですね。北の動きについて河野先生はいかがですか。
河野 北が本気で戦争をやるとは思いません。ただアメリカを交渉の場に引っ張り出したい一心で関心を引くための挑発が止まらず、瀬戸際から一歩踏み出しそうな感じもします。現在、北に対して外交的には全く何もやっていません。拉致問題が解決しない限りは外交交渉をしないという訳で、危機対応が出来ないのです。
岩見 拉致の解決が何より優先で、同じように重要な核の脅威に無策では困ります。小泉さんも工夫して知恵を出さないといけないですよ。

日中首脳会談なく対北交渉手詰まり
河野 北に影響力をもっている中国が一つの鍵ですが、日中の首脳会談をやらないといっている限りは手詰まりなのです。振り回されているうちに株があっという間に7000円台に下がって3月決算が心配だと言われています。3月末の株価が問題ですが、多くは1ヵ月の平均値で決算が出来るので、月半ばでもう株価による3月危機はないだろうと金融庁は見ています。
 しかし、この状況の中で戦争が始まった場合、アメリカでは、現在3000億ドルの赤字ですが、戦争になるとさらに1000億ドルが膨らむと言われています。日本にもその影響が出てくるでしょう。口先で株価を上げても企業の本質は変わりません。
岩見 15年度の本予算の成立前に大型補正予算を組めという声がありますが小泉さんはやる気がな いようです。あったとしても言えないでしょう。
河野 去年の当初予算プラス補正予算に比べて小さい当初予算では縮小傾向に見えますから、景気が良くなるのは難しいでしょう。
岩見 これは小泉経済政策の失政だという声が大きくなってきましたね。公約破りについての「大したことない」発言もびっくりしました。大失言だと思うのですが、野党がおとなしいですね。公約を破っては政治にならないですよ。
河野 昨日の野党との党首会談でも、イラク問題について雰囲気で決めると言うし、本人に確信がなく、なんとなく話をしている感じですね。
岩見 亀井静香さんに言わせると宇宙人と話しているようだそうです。総理大臣として面白いキャラクターではあっても肝心なところが脱落している印象を国民が持ち始めていますね。解散は9月の総裁選とからめて大体どういう流れになると見ていますか。
河野 来月には統一地方選挙があります。その結果で流れは見えて来るでしょう。経済不況は一層深刻ですし、イラク、北問題で戦争が間近に迫っている感じで、5、6月の選挙は考えられないでしょう。夏を越して総裁選で小泉さんが圧勝することでもあれば来年のダブル選挙が視野に入ってきます。
岩見 小泉さんは再選が難しいとなれば9月前解散もあるのではないでしょうか。
河野 はっきりと反小泉包囲網が出来て再選が難しいとなれば、どこかで突破していかなければということもあるでしょう。
岩見 今度は金融システム安定化対策本部長に就任されたそうですね。
河野 直前まで本部長だった山中貞則さんから直接頼まれて断れなかったのです。総裁の直属の大きな機関で、初代の本部長は宮沢元総理ですし、とにかく一生懸命やります。
岩見 健康を回復されて活躍されていますが、くれぐれも無理をなさらずにがんばってください。

(3月14日対談)