総裁選
右傾化には歯止めが必要=河野

批判勢力の一本化は当然=岩見
 
岩見隆夫さんと語り合う(7月17日、政工研で)


岩見
 国会も後半になって何かとにぎやかになってきました。河野先生の場合は特に総裁選の候補の一人として名前が上がっていますし、支持者の方たちの関心も強いようですから、まず現在の心境をお聞かせください。
河野 前回の総裁選を戦ったのは小泉、麻生、橋本、亀井の4氏ですが、亀井さんは途中で戦線を離脱したりして信頼に欠けます。それに今回は橋本さんも出ないようですから、残っているのは小泉、麻生両氏だけです。前回負けた麻生君も政調会長に指名され、2年の間努力して意見が取り入れられたものもあるわけで、まだ総裁の任期が残っている今マスコミに聞かれても、出馬するなどと軽々に言わずにしっかりと責任を果たして欲しいと言いました。

景気回復は至難小泉流経済政策
 今、一番大事なことは経済と外交です。私はかねてから小泉さんの経済政策では、景気は回復しないと思ってきました。金融政策は日銀がしっかりやっているのになぜ緊縮予算を組むのか理解できません。景気対策については、麻生政調会長が言っている事を私は支持しています。
 一方、外交の議論は派閥内とか国内での内向きなものばかりで、国際社会に通用する議論になっていません。10年前には考えられないような自分本位の議論が多く、近隣諸国と共に生きようというこれまでの決意と大きな違いが出てきています。これでいいのかと考えている人は相当いると思うのですが、表に声が全然出てこないですね。
 私は今の政府や党内で声高に語られている外交政策に対して非常に危惧を持っています。残念ながら私の主張は党のマジョリティー(多数派)になっていません。マジョリティーにするためには妥協が必要でしょうが、自分の主張を簡単に曲げる訳にはいきません。今は、正直にはっきりと発言ができるポジションに関心があります。まだいろんな人に考えを聞いている段階です。国の政策決定が重要な場面にきていると思うからです。
岩見 イラク復興援助法については消極的賛成に回られたようですが…。
河野 もともと私は小泉さんに対して簡単にアメリカを支持すると言うべきでないし、どうしてもというならやむをえないと言うべきだと直言してきました。私自身はあの場面で米国の行動を支持していいとは思わなかったからです。イラク援助法については二つ言いたいことがあります。参議院を通って法律が出来れば、それを根拠に政府は調査団を出すでしょう。今のイラクが一体どうなっているか、ゲリラ戦といわれる戦闘はまだ続いているのか、日本が援助できるようなニーズがあるのかをしっかりと調べて、きちんと正確に報告して欲しいと思います。これを受けて政府はどうするかを考えるところが一番大事だと思います。
 もう一つはなぜイラク援助なのかということです。悲惨な状況だということはわかりますが、なぜアフガン援助をやらないかということです。イラクに対しては人道的援助から始まって復興・復旧までやろうとしていますが、それなら何故国際的な貢献が必要なアフガンに対する援助法を作らないのでしょう。日本の国際的貢献を積極的に示すなら、なぜアフガンをとばしてイラクなのかということです。アフガンの人たちは、先進国はイラクの石油に興味があり、我々はもう忘れられてしまったのかと怒っているようです。
 国際世論を作るTVなどの報道もアフガン戦争については一過性のようで、今はイラクに興味が向けられ、このままいくとそのうちイラクも忘れられのではないかと思いますね。
岩見 河野先生はイラクに自衛隊を出すことには本来反対なのですね。
河野 私のカンボジアの経験から言いますと、自衛隊は現地に行けば、まず自分で基地を作り、宿舎を建てて食堂や風呂場などの施設をつくる自己完結型です。ところが警察官は各国の警察とグループを作って仕事をしましたが、言葉は通じないし生活習慣も違うという事で、当時私は警察官を出すくらいなら、自衛隊を出す方が安心だと思いました。しかし廬溝橋事件は、たまたま付近にいた、居留民保護のために派遣を認められていた日本の部隊が発砲に応じたのが発端でした。そこにいる事で当初の目的と違う方向に行ってしまったこともある訳です。
岩見 巻き込まれ論と言いますが、日米首脳でOKして帰って来たトップの約束ですから、細かな議論はともかくとして、自衛隊を出すという結論ありきの話ですからね。

ゲリラ戦続くイラクの国内
河野 ブッシュ大統領は、大規模な戦闘は終わったと宣言しましたが、どうも実態はイラク戦争は終わっておらず、街の中でゲリラ戦になっています。
岩見 日本は難しい立場ですね。日米同盟がありますから付き合えないとは言いいにくいでしょうし、悩ましいところです。
河野 イギリスも難しいことになっていますね。ブレア首相が米国に行き、箱根で日英首脳会談を行いましたが、国内ではイラク戦争参戦について世論の支持が得られずに苦慮しているようです。
岩見 訪英した経団連の会長にコイズミが羨ましいと言ったそうです。話を総裁選に戻しますと、小泉さんの対抗馬がなくて無投票にでもなれば、また三年間政権の座にいる訳で、この際自民党の人たちはじっくりと考えて対応策をとらざるを得ませんね。
河野 2年も政権を担当し、支持率も50%を超えていることもあってか、首相の最近の言動は相当強気です。
岩見 反小泉というか批判勢力が、何とか一本化したいと思うのは当然のことでしょう。亀井静香さんは事あるごとに、一本化する場合は、河野先生か堀内さんがいいと言っています。
河野 あの手の人に担がれるのもつらいところがあり河野岩見ますね(笑い)。
岩見 ところで最近アジア・アフリカ研究会が復活されたのは大変大きな意味があると思います。随分空白がありましたからね。
河野 AA研といえば宇都宮徳馬、伊東正義、後藤田正晴といった錚々たる人たちが会長を務めておられました。歴史、質量ともに議員連盟としてはトップクラスの集団でした。私が引き継いだ時は、ここしばらくほとんど活動らしいこともないのに、50人のメンバーがおられました。
岩見 復活は河野先生のお考えですか。
河野 事務局を預かっていた野沢さんが森前首相に相談し、私が森さんからから直接口説かれて引き受けました。その時、森さんにあなたがやったらどうかと言ったところ、自分はアフリカ議連の会長になっている。AA研を河野さんが引き受けてくれるならタイアップしてやろうと言われました。先ほど話したアフガンの問題なども議論したらいいと思います。副会長や事務局長の人事はは一任されましたのでこれから選びます。
岩見 随分懐かしい名前がいっぱい出てきましたが、現在の米国一辺倒の場面にAA研の復活は段々意味が出てきますね。
河野 日本全体が右に向いてきたということで逆に注目されているのでしょう。宇都宮先生が言われたように、軍拡の流れになれば軍縮議連が必要になる訳です。ここにきて軍縮とAA研の会長を両方引き受けたのです。
岩見 最近また韓国に行かれて金大中さんとお会いになったようですね。
河野 6月下旬に釜山大学で開かれたシンポジウムで講演した機会に、ソウルの自宅を訪問して一時間ほど話をしてきました。非常に元気でした。金大中さんは北の問題の平和解決に対する思い入れがあります。それは、北は核を全部捨てる、アメリカは北を認める、という図式しか朝鮮半島の緊張を緩和して平和を確立する道はなく、話し合いによる解決しかないと固く信じています。経済制裁などで問題は解決しないと彼は30年間一貫して主張して、それ以外の方法はないと言うのです。
岩見 ノ・ムヒョン大統領とは方向性も同じだし、いい関係のようですね。
河野 ところが現大統領は現在、国内での評判は散々です。先般の日本訪問も韓国マスコミは悪かったですね。
岩見 大統領は国会でも演説をしましたね。
河野 私は良かったと思っています。しかし大統領は用意周到に原稿を準備し、国会議員に配りましたが、当日大事なところを言い換えて演説しました。国内からのプレッシャーで手を入れたようです。
岩見 総裁選がらみで解散・総選挙の日程がかまびすしく言われています。小泉さんのシナリオでは早めに人事をやり、2カ月で全部やろうとしているように見えます。
河野 国対の専門家によると国会対策上難しいそうです。つまり9月20日に総裁選をやる方向のようですが、10月14日からスタート予定の秋の統一補選を吸収するため、10月10日までに解散する事は非常に難しいようです。

混迷続く政局で解散の大義は?
岩見 皆があれだけ言っていて、しかし年内解散は無理してやることはないという声もあります。
河野 大義名分があるような、ないような不思議な政局です。
岩見 それにしても国会議員の失言や放言が目立ちます。市中引き回しの上に打ち首など言語道断ですし、小泉首相の踏み絵発言にしてもひどいですよ。どうぞ混迷政局に備えてご自愛下さい。

(7月17日対談)