変化を見せる米国内世論=河野
泥沼化を招く報復の論理=岩見
 

岩見 ベタなぎ政局だと思っていたら、イラクの人質事件が起きて国民の心情は複雑です。
河野 小泉さんは国際社会の一員としてイラクの人道復興支援をやるのですよと言っていますが、国連主導ではなく誰の目から見てもアメリカ主導です。 アメリカの手伝いと見られかねません。
岩見 犯人側の要求を見ると日本の動きを逐一知り過ぎるぐらい知っていました。
河野 あの三人がイラクのために何をしていたのかということを私たちですら知りませんでした。なのにイラク側が彼らは良くやったと言うのは奇妙ですね。
岩見 それとイラクについては何回も退避勧告が出ていたにもかかわらずつかまれば、「救出」と言わざるを得ませんが、一皮めくると人騒がせな連中で、行った方が悪いと言う気持ちも少しはありますね。

日米中東の関係に影落とす人質事件

河野 今度の場合は日本とアメリカ、アメリカとイスラエル、イスラエルと中東の関係が裏にありますから、ただあの勝手な行動を問題にして事件を歪少化してはいけないと思います。
岩見 小泉内閣としての態度ははっきりしていました。これでこの派遣問題はクリアーしたと思ってもらったら困りますね。自衛隊派遣の是非についてはこれからも考えなければなりません。このところイラクにおけるアメリカのやり方は常軌を逸していますね。
河野 4月に入ったあたりからイラクの状況は変わったように見えます。アメリカの国内世論も変わりました。もう一度見直す必要があると思います。
岩見 小泉さんは棒を呑んだように事件の前も後も同じことを繰り返して言っていますが、国民に対する説明が足りません。
河野 ニュースもこの頃はサマワのことしか言いませんが、実はイラクの大部分で今までにない抵抗にあっていますよね。
岩見 軍事的に圧倒的に強いアメリカが、目には目をでやっていたら全く収拾がつきませんね。
河野 ファルージャではこの間に多数の死者が出るなど尋常ではないですね。
岩見 最近は報道も批判的になっていると思います。こういう時に日本政府は米国に対しイラクでの軍事行動を自制するように忠告するべきです。
河野 このままだとまだまだいくつか難しい場面にぶつかるでしょうね。

派遣、撤退問題で議論不発の立法府

岩見 イラクへの自衛隊派遣が国会で承認された時、立法府の議員があまりにものを言わな過ぎましたね。
河野 財界有数の知米派である小林陽太郎さんがある新聞にアメリカが大統領を選ぶ時にはアメリカの都合だけでやってはいけない時代になってきた。アメリカでどんな大統領が選ばれるかによって世界が危機に陥ることだってあり得るのだから、世界中の人に選挙権を与えて欲しいと言ってい ます。
岩見 気分は良く分かりますね。少し前まで自民党はイラク問題でも充分参院選を戦えると思っていたようです。ここにきて人質事件が起きたりして、そう単純にはいきませんね。
河野 マスコミの世論調査でも撤退するかどうかでも一時は45%のレベルで拮抗しました。
岩見 人質が釈放され、小泉さんはついてると言う声が出始めています。
 ところで人質事件の前日、小泉さんの靖国神社参拝に違憲判決がありました。判決文をつぶさに読んでみると相当政治的な判決だと思いました。違憲の是非はともかくとして司法も乱暴ですね。

疑問残した総理の靖国参拝違憲判決

河野 不思議なことに判決の中に憲法違反だと書いていましたけれど、結局原告側の敗訴です。しかし原告側は金が欲しくてやったのではないし、靖国参拝が違憲だとはっきりしたので勝ったと言うし、政府側もいい加減な判決だから駄目だと言っているものの、結局勝訴ですから控訴は出来ないですよね。
岩見 この訴訟では控訴が出来ないという良く分からない結論になって、あの判決は残ってしまいます。拘束力はないと言いますが、傍論で憲法判断されても困りますよ。
河野 判決が出た後の小泉さんは、それなら伊勢神宮もいけないのかと言ったり、急にあれは私的参拝だと言い出しました。これまでもマスコミから公人か私人として参拝したのかと尋ねられてばかなことを聞くなと怒った人もありましたが、内閣総理大臣・小泉純一郎と記帳しているし私人とは言えません。
岩見 イラク問題もそうですが、小泉さんはもう少し分かりやすく言うべきですよ。
河野 議長席でも聞いていると、役人の書いた答弁の中に相当ひどいものがありますね。例えばこの法律は国の改革に逆行していると追及されると、政府側答弁は逆行ではありませんと言うだけで、なぜ逆行ではないのかは言わない。
岩見 小泉内閣になってからひどくなりましたね。
河野 小泉さんは自分の言葉で答弁するからまだしも、閣僚の中には答弁書を読むだけで、国民に聞いてもらって納得してもらおうという姿勢がありません。立法府が行政府に軽くみられているように思うのです。
岩見 それは総理大臣の持ち味や雰囲気が反映されているのかな。(笑い)
河野 池田首相は寛容と忍耐をモットーに答弁していましたし、小渕さんなどは丁寧に答えていました。いつも言うことですがもう一寸丁寧に答えればよいと思う場面がよくあります。
岩見 靖国判決の最後のところに、このままほおって置くと総理大臣は引き続き参拝をするだろうし、それを止めなければならないので、敢えて憲法判断をしなければならない責務を感じたと言っています。
河野 総理の靖国参拝には二つの問題があります。一つは宗教上の「信教の自由」の問題と、もう一つは近隣諸国との関係をスムーズに進めるため歴史認識のきちっとした行動をすることだと思います。


ハルウララの日差しを浴びながら(4月12日、衆院議長公邸で)


後半国会の焦点は年金・有事関連法
岩見 後半国会に入ると焦点は年金と有事関連法案など色々ありますが、中心は年金法案でしょうか。小泉さんは一元化や議員年金の全廃方針などを発言しましたが、野党に対するかく乱策ですかね。
河野 そういうのは上手ですよ。
岩見 小泉さんは引っ掻き回しの天才ですね。これによって何か実りある結果を出す意欲があるのでしょうか。これで後半国会はうまくいきますか。
河野 議員年金は急いで審議会の委員の人選をしています。審議会は一定の時間は欲しいでしょうし、急いで審査をやってくれと言ったら有識者は集まらないと思います。
岩見 民主党もスランプに陥っていますね。政権党たらんという気持ちばかりが空回りして二大政党と言う掛け声は出ましたけれども、それらしくないですね。大きな政党ががっぷり四つに組んだと言う感じがないですね。どうも平板で薄っぺらな感じがしていますね。ひとつ議長采配で立法府を元気にしていただきたいですね。
河野 何が立法府の復権にいいのか真剣に考えています。このところ議長外交と言われていますが、世界80カ国あまりの大使等を順次グループごとに公邸に招いて交流しています。その席では軍縮や世界平和などについてスピーチをしています。
岩見 かつて参議院の土屋議長が熱心でしたが、衆議院議長の外交も貴重です。がんばって下さい。
(4月12日対談)