
| 異文化はお互いを尊敬し=河野 表現の自由以前の問題だ=岩見 |
![]() 岩見 お正月はギリシャから北アフリカにご旅行とか。久しぶりですね。 河野 チュニジアの大統領、ギリシャの議長の招待でした。チュニジアでは私が5年前に提案したイスラム圏と日本の「文明間対話」の会合を首都のチュニスでやっていて、私もスピーチをしましたが、日本からも東大の教授など学者が参加していました。 岩見 イスラムといえば今まさに、イスラム教の預言者ムハンマドを風刺する漫画をデンマークの新聞が掲載したことを発端に「異文化」間の騒動が起きています。 河野 宗教が違い、文明も歴史も違うんだから、その違いを認め合あうというところがないと。 岩見 私も「表現の自由」の問題とはちょっと違うんじゃないかなという感じを持ちます。やはりムハンマドは崇拝の対象ですからこれを風刺するというのは神経に障るのはあたりまえで、これは「行儀作法」の話じゃないかという気がするんですよね。 河野 基本的にお互いを尊敬するという気持ちがないとダメですね。 岩見 ヨーロッパの皆さんも少し考えた方がいい。風刺画からああいう騒ぎになるとは。 河野 戦争はこんなことから起きることもあるんですよね。アジアも相互不信の下地が出来ていると、つまらないことで燃え広がる可能性があります。日頃から誤解の無いような話し合いが大事じゃないですかね。 4点セットはモラルの問題 岩見 最近の日本の政治も相当揺れています。 河野 通常国会が始まってみますと、3分の2の議席の重みというのは凄いです。「少数意見の尊重」とは言うんですけれども、片方は3百以上あるというのに、社民党も共産党も6議席とか7議席とかですから、なかなか難しい。 予算委員会の総括質問も初日はほとんど与党でした。あれなんかやっぱり政府が予算案を「審議してください」って提出したのだから、本来は反対意見を最初に聞くべきでしょうね。 岩見 初っぱなから自民党がやって、公明党までやりましたね。民主党が少し弱腰ではないですか。 河野 あまり抵抗もしなかったようです。どうも不思議なことですよね。 岩見 一方で、小泉さんも多少力が弱まったのか与党の中でも自己調節機能のようなものが働きだして、皇室典範とか、防衛省昇格なんかは見送るようですね。 もっぱら耐震強度偽装、米国産牛肉輸入再開、ライブドア、防衛施設庁の官製談合と4点セットなんて言いますけれど、非常にモラルというのか、ルールが乱れているというのか、みんな共通するものがありますね。 河野 官製談合などは官僚組織に問題があると思います。しかし、その一方で何かというと全部「官僚が悪い」ということにしてね、責任を全部官僚に押しつけすぎているんではないかという気もするんですね。 官僚は法律の中で動くわけです。その法律作っているのは政治家です。政治家が法律を作る時に大事なところを政令、省令に委ねてしまっている。それが官僚組織のやりやすい状況を作っている。 岩見 今度の防衛施設庁のケースは天下りと表裏一体になっているんですよ。天下りで人をたくさん引き受けてくれたところに、高くても仕事をやりますよと。それは税金で払うわけですから。やりたい放題やってるなという感じがします。 河野 野党もしっかりやるべきだが、与党だってもっとやらなきゃいけません。徹底的にやったらいいと思いますね。 岩見 しかし、去年の暮れからホリエモン逮捕で空気ががらっと変わりました。検察庁がメスを入れると様子が急変しますね。 河野 昨年の解散について私は慎重論だったのですが、やっぱりあの辺に無理があったんですよね。 岩見 ごり押しで何かをやってしまうと、後遺症が跡を引きます。 河野 与野党ともに腋が甘くて永田問題など問題を次々起こします。 岩見 皇室典範改正の問題は扱い方も含めて難しいですね。 河野 小泉さんもご懐妊のニュース一本で「もう止めた」みたいな話しでは、皇室典範改正を提起する立場の人としては、いかがなものかと思いますよね。 岩見 そう軽々に「止めた」じゃ困りますね。ここまで来ると、もうこの国会には提出しないということになるでしょうか。 河野 そうでしょうね。もう少しわかりやすい議論で、国民も理解できるものを提案したらいいと思うんです。 岩見 政権末期なんでしょうが、外交は心配ですね。特に中韓とはにっちもさっちもという感じで。 河野 先日、ある外相経験者が「アジア外交が心配だ。小泉さんの次の総理大臣が靖国に参拝するようなことがあったら、日本はアジアで全く孤立するでしょう。それだけは絶対避けなきゃいけません」と言いました。 参拝しないと明言すべきだ 彼は「今、中国は小泉の次まで待とうと言っている。しかしこの次もダメだったら、中国はもう待てないでアジア政策は中国一人でやるでしょう」と。 岩見 中国はアジア政策について「日本と組んでやった方が収まりがいい」「日中協力してアジア政策を進めよう」と思って今は待っているのでしょう。 河野 それを次も靖国となったら「もう待ちきれないから一人でやるわ」と中国は独自のアジア政策をやる。日本も独自でやればというけれども、それは睨み合ったままでそんなに簡単にはできません。「そうなれば今の勢いだとASEANの大部分は中国の方に行きます。日本はどうするんですか」という話しでした。 そして「もし安倍さんが総理になるなら、靖国に行くのを止めなければなりません。靖国参拝は『しない』と言わなくても、実際問題として行かなければいい」というのです。 岩見 しかし安倍さんの場合はこれまでの発言もあり「行かない」とはっきり言わなければまずいでしょう。 それにしても靖国神社の展示施設「遊就館」には、アメリカもずいぶん関心を持ってます。私もこの前見てきましたけど、あれは軍国主義そのものですね。そこにいつ行くかわからんではね。 この国会は延長なんてことはなくて‥ 河野 と思います。延長しなきゃ出来ないほどの法案はもう小泉さんの力では通らないんじゃないかという気がします。 岩見 行政改革推進法案は。 河野 これが最後の仕事ですね。中馬弘毅大臣も一生懸命やっています。小泉さんはどこまで考えてるか知らないけれども、アメリカだって変わる可能性ありますよね。ブッシュの支持率はずいぶん低下してるでしょう。 岩見 不思議なことは、歴代総理でこんなに早く自分の退陣を公式に表明した人はなかったでしょう。その結果、政治が緊張感をうしなって失速してきて。 河野 これでは、この半年間というものが、政治的には「空白」になっちゃう可能性がありますね。 岩見 もうなりつつあると思います。 政治は弱い人に光を当てるべき 河野 小泉改革の結果、勝ち組と負け組ができました。 岩見 竹中路線ですよ。後藤田さんは「やっぱり負け組というか、弱い人に光を当てるのが政治の役割、それが政治なんだ」と言っていました。 小泉さんは政治は「勝ち組、成功者を奨励する。そのことが活性化を招く」と言うんです。全然違うんですよね。いま、小泉・竹中路線で「もっと競争しろ」「それ強いものは勝つんだ」とやっているんだけれども、これを続けているとおかしくなると思いますね。 河野 やっぱりホリエモンを選挙で担いだっていうあの感覚が非常に象徴的なんですよ。 岩見 小泉さんは9月にお辞めいただくんで。もうギリギリですね(笑)。 (2月14日対談) チュニジアの市場にて |