まじめな政策論議必要=河野
延長なしは納得し難い=岩見
 

岩見 通常国会は延長なしで閉じたわけですが、ちょっと納得しずらいところがありました。
河野 この国会は与党が3分の2の議席を占めるという体制ではじめた国会ですから、自民党からすれば、これだけの議席をいただいておいて、懸案も処理せずまた先送りじゃ「何のための3分の2だ」という党内の突き上げがあったようです。
岩見 それにしても法案の審議を重要なものを含めて1本も残して会期延長せずに終わるというのがちょっと不思議ですね。
 
慎重運転必要な3分の2議席
 
河野 会期末も見えてきたときに、国際テロを未然に防ごうという、いわゆる共謀罪で与野党の話がつかずに「強行採決する」と与党が公然と言うので、私は与野党の国対委員長に「これで強行採決というのは穏やかではありません。もう少し話をしたら」と言ったんです。
 法務省は何回もこの「共謀罪」の審議を求めてきて、今度こそと杉浦法務大臣が法務省提出の法案の一番先にしたのです。
岩見 その頃、官邸周辺には「もうだめかな」という話しがあったようです。
河野 それなのに小泉さんは「会期延長しない」と言ったのです。みんなもう一月ぐらいの会期延長は覚悟していたでしょう。
岩見 小泉さんは「野党も反対だった。野党の言い分に耳を傾けて延長を止めたんだ」といっていたけれども、変な話しですね。
河野 小泉さんがなぜ延長しなかったのか、本当の腹の中がよくわかりません。
岩見 小泉政治は「鶴の一声」政治と言われていますが、全部小泉さんが決めるんですね。こんなこと、ちょっと私の経験にはないんですけれども。
河野 国会の対応も小泉さんからの指令があるようですね。
岩見 どうも政党政治になってないという感じですね。「党の意思」が見えないですね。
河野 自民党は長い経験で、幹事長は総裁と別の派閥の人にして、幹事長はもっと独立した人物がなって、なんかあれば官邸に怒鳴り込むこともあったんですよ。
岩見 そうした知恵を、小泉さんはみんな壊してしまった。
 
テネシー訪問は中間選挙PRか?
 
河野 国会が終わって小泉さんはアメリカに行きましたが、思えば小泉政権になってすぐアメリカは9・11で大ショックを受けて、異常なアメリカに5年間付き合ったのです。
 この5年の間アメリカはイラクに攻め込んだりで、けんかのし通しでした。それにずっと付き合ったわけですから、「異常な状況」のなかでの付き合いですよ。
 「プレスリーのところに二人で行こう」と言ったけれども、そのプレスリーの邸宅があるのはテネシー州で、ここは共和党にとって秋の中間選挙の「天下分け目」の場所なわけです。そこに小泉さんを乗せて大統領専用機でダーッと行くわけですよ。
 そうして「牛肉も解決した」と言うわけですよ。つまり小泉さんは結果的に共和党の選挙戦術の片棒を担がされているのかもしれません。
岩見 この日米首脳会談は本来は「イラク」の総括をしてもらわなければいけないわけです。イギリスのブレア首相が行ったときは、二人でわりと反省調の話をしていますよ。
河野 あれが本当なんでしょう。
岩見
 プレスにも責任がありますが、小泉さんの訪問はどうもプレスリー騒動で終わったようですね。
河野 小泉さんのように、お互いに抜き差しならない仲になっているからこそ、相当物言っても良かったんですよ。「もう少し反省した方がいい」とか。
岩見 宮沢さんも「在日米軍の再編」という大きな問題を「小泉さんも大統領も重いものと考えていないようだ」と言うんですよね。
 本来はトップ対トップでやるべきことを防衛当局に任せっきりだと宮沢さんは心配しているわけです。
河野 いまは、小泉さんが「これからの日本の安全保障はこうなんだ」ということをちゃんと言わなければならない時ですね。
 アメリカがインドに核技術の援助をするなんてことについても、日本の立場から「それはちょっと待ってほしい」と言わなければなりません。
岩見 ブッシュさんがいやがることは言わないというのでは、締まりのない外交になります。国会閉じたあとの記者会見なんかも、たったの20分ですよ。今のような話は全然聞かないんですから。
岩見 中国は相変わらず8月1日の靖国に注目しています。すると安倍さんは8月15日のあとまで正式出馬表明を遅らすと言っています。辞めていく総理がどうかということより「私はこうする」ということを言わなければ。
河野 3人の候補者が閣内にいるわけです。閣僚が、閣議では小泉さんの行動に対して何も言わないで「小泉さんはこうだけれども、私は違う」というのは変な話ですよね。
岩見 言わなきゃ、こういう時期には。いままでの5年間を見て「何いってもダメ」とあきらめているところがありますかね。
河野 政権の終わり方がどうなるかにもよるわけですが、田中内閣の時は三木さんも保利さんも福田さんもみな内閣を辞めましたね。
 最後までつきあったら、結局たいしたことは言えません。
岩見 けんかして辞めなくても辞退すればいいわけですからね。
 8月に入るともう立ち会い演説会のようなブロック大会を開くようですね。
河野 そこに出る人の資格をどうやって決めるのでしょうね。
岩見 「俺は出馬するつもりだ」と言えば出さざる得ないでしょう。
河野
 そういう人が十人もいたらどうするんでしょう。
岩見 本当は告示前にこんなことやるのはおかしいですよ。いかにも便宜的ですね。
 議長の立場では言えないわけですが、どうですか。
河野 そうした場で経済政策と外交政策、それと地方分権論をきちんと議論することは大事だと思いますね。景気対策をどういうふうにやっていくのか、財政とのバランスについても、まじめに議論してもらいたいですね。
 外交政策も「アジア外交」をはじめとして、ヨーロッパもロシアもみんな行き詰まりです。アメリカだって小泉さんが辞めた後、日米関係がうまくいくという保証はありません。
岩見 こんな時にただ「次の選挙に勝てる人がいい」というのも、また変な話しです。党内が意気地がなくなってきてしまっています。
 
 
「大宏池会」で針路の安定を
 
河野 近頃話題の「大宏池会構想」は総裁選目当てということだけではなく、自民党の中に良質の流れをしっかり作り直すという意味があります。
 かつて自民党を席巻していた田中派、次いでその対極にあった党内の「右派」の福田派が、ここ何年も自民党を覆っていました。
 そういうときに「リベラル」「中道」の外交政策や財政政策を主張する宏池会が一定の数をもって存在することは党の政策的な安定になるし、日本の社会の安定にもなるでしょう。
岩見 そう思いますね。たしかに「大宏池会構想」は今度の総裁選で仮に大きな力を発揮できないにしても、長い目で見たらやっておかなければいかんわけですね。
 小泉さんは、ぼくらから見ると「無思想」なんですよ。過去の自民党の歴史を見ると、こういうときには出てくるもんですけどね。誰かがいつの間にか中心に座って「行こう」ということになるんだけど。
河野 救世主が出てきてほしいですね。何も9月だけが勝負ではない。来年の参議院選挙まで見通して、向こう一年間くらいの勝負を考えることも必要でしょう。
(6月28日対談)



小泉総理より予算案衆院通過の挨拶を受ける(3月2日院内議長室)