選挙の年、政治に厳しい眼=河野
はずみがつかない民主党=岩見
  

岩見 年末は中国にお出かけになったんですね。
河野 七月に亡くなった橋本龍太郎さんがやっていた日本国際貿易促進協会の会長を九月に引き受け、年内には挨拶をと思いまして、臨時国会が終わってから出かけました。
 短い日程でしたが、胡錦涛主席、呉邦国全人代常務委員長、曽慶紅副主席、唐家 国務委員といった人々と会談しました。向こうの国貿促、僕のカウンターパートは万季飛という人で、 小平時代に副首相や全人代常務委員長を務めた万里氏の息子です。それから胡錦涛主席の後継候補の一人と言われる薄熙来商務相。全部をほぼ一日でやったのでくたびれました。
岩見 向こうはすごい対応ですね。
河野 会った人に言ったのは「日中双方の首脳の非常に重い決断があって安倍訪中ができて、本当に良かったと思う。ただ、その直後の北朝鮮による核実験で外務当局がそっちの対応に追われ、日中首脳会談の合意事項がなかなか進まない心配がある」。
 中国は「両国の合意事項はできるだけ早く進めよう」と言うので「日本側もそう思っている」。そこで羽田‐上海・虹橋空港間のシャトル便とか、中国の農村部の開発など具体的な点にも触れながら「中国側も努力してほしい」と強調したんです。
 
風格増した胡錦涛主席
 
 二年ぶりに会った胡錦涛主席は一段と風格を増していました。私の話に「その通りです。関係者には私から指示します」と言っていました。
岩見 さて、年が明けまして、今年は政治的にはどういう年なんでしょうか。
河野 参院選と統一地方選が同じ年にあって、国民の政治に対する関心は高くなるでしょう。地域格差ということも含め「格差の拡大」が指摘され、医療とか年金とかが心配で、国民負担が重くなるんじゃないかと生活者は政治に対する「厳しい眼」を持つ年でしょう。
 そういう年に安倍政権の支持率が少し下がっているのは、ちょっと心配ですね。
岩見 安倍内閣ができて4ヶ月。この采配はご覧になっていて不安はありませんか。
河野 支持率低下の理由は「復党問題」だと言われているけれども、それもあると思いますが、実際はタウンミーティングのやらせ、これは教育基本法や司法改革という重要テーマに裏があるということだし、それと任命した人物のスキャンダルなどが重なり内閣支持率低下につながっている。
 
イラク政策は一言あるべき
 
岩見 外交についてはどうですか。
河野 北朝鮮についてはアメリカ次第ということになるんでしょうね。
岩見 そのアメリカもガタガタしている。イラク政策も揺れている感じです。
河野 私は日本の外交に二つ気になることがあるんです。ひとつは小泉さんがアメリカのイラク攻撃を「支持する」と言ってしまっている。
 安倍さんに代わってアジア外交については姿勢を変えたが、イラク問題についてはどうするか言わないんですね。アメリカ世論はすっかり変わって、中間選挙の結果にもそれが反映されている。欧州もいっそう批判的になっている中で日本だけが支持すると言ったっきりです。
 もう一つは「核軍縮」です。この5年間、日本の総理大臣は国連総会の演説で「核軍縮」と言う言葉をたったひと言しか発していない。
岩見 そうですかね。
河野 「核不拡散」とは言っています。だけど核不拡散条約(NPT)の本来の考え方は「持ってる国は減らしなさい、持っていない国は持ってはいけません」ということなのだけれども、不拡散は繰り返し言うのに、核軍縮については何も言わないわけですよ。
岩見 持たない国の不拡散だけ言っているわけですね。小泉さんがひと言だけですか。
河野 国連総会でひと言触れただけのようです。これはバランスを欠いています。アメリカに対して何も言いたくないという感じですよね。
岩見 国連ではほとんど言っていないということですね。
河野 最近は他の国もあまり言っていないですよ。でもみんなが言わなくても、日本だけは言わなきゃおかしいですよ、核軍縮を。
岩見 なるほど。まだまだやるべきことがありますね、安倍さんも。
 安倍内閣も難しい状況なんですが、一方の民主党ももうひとつ弾みがついていませんね。
河野 どうも臨時国会の最後に「小沢一郎君他何名」で内閣不信任案を出して、菅直人さんが本会議で趣旨説明する時に、小沢さんは議場にいないんだから。
 それと、安倍さんは次の参議院選挙で「憲法改正を問う」と言っているわけですよね。野党がそれに対してどう対応するか。共産党と社民党だけはハッキリと「護憲」と言っているが、民主党は旗幟がはっきりしていないですよね。安倍さんにあそこまで言われたら「9条どうするか」という議論になるんですよ、それに対して民主党の中はまだバラバラですよ。
岩見 なかなかはっきりと言えないですな。
河野 それじゃあ、戦えないでしょう。しかも、民主党の声の大きい人たちは「憲法改正いいじゃないか」と言っているわけですから、そう言っておきながら「一人区で共闘」と言ったって、これはむずかしい。
岩見 教育基本法にしたところで、反対はしたけれども、内心「まあいいか」という感じも見られました。
 あれやこれや、小沢民主党っていうのは、選挙上手だと言われてるけれども、実は選挙はあんまり勝ってないし。空回りしているような空気がちょっとあるんですよね。
 今年の夏は、安倍さん、小沢さんのどっちかが辞めるということになるんでしょうか。
河野 自民党の方はもうすでに中川幹事長は負けりゃ私の責任だってことを言っているわけですよ。つまり、自民党は安倍まで行かないように守ろうという人がいるんですが、民主党の方にはそういう人が見あたりません。  
 
若手議員と対話進める
 
岩見 河野さんの今年の政治活動の重点はどういうところに。
河野 一つは、もっと若い議員たちと「対話」しようと思います。自民党に限らず、若い議員たちに、今なぜこうなっているのかとか、あるいは憲法や歴史の問題も含め、対話する機会をつくろうと思っています。
岩見 大事なことですね。
河野 どうも全体が右に寄っているように見えるので、リベラルというか、ハトというか、そういう考え方をもう1回再興しようということです。リベラルな発言や行動を躊躇している人に「そんなことは、サバサバと言いなさいよ」と。そして「君一人じゃないから」と少し元気づけたりする仕事をしようと思っています。
岩見 いいですね。
河野 それから、河野太郎代議士のような若い議員が、僕が本会議場での若手議員たちの審議態度を注意した時に「つまらないから寝ちゃうんで、本会議が面白ければ寝ないんだ」と言うから、本会議の意味をよく考えなさい、国会議員が本当に勝負するのは委員会でなく本会議だ。10年に一回、本当に大勝負するのはこの舞台だと言って聞かせたんですよ。 (1月4日対談)