新しいレジームを堅持 

 昨年の8月15日、天皇皇后両陛下ご臨席のもと日本武道館で行われた「全国戦没者追悼式」で河野洋平衆議院議長は「今日のわが国の平和と繁栄は、戦没者の方々の尊い犠牲の上に築かれたものであり、私たちは日本人として、これを決して忘れてはならない」と、一家の大黒柱であったり、あるいは前途を嘱望された青年だった戦死者への追悼のことばを始めました。
 つづいて河野議長が「日本軍の一部による非人道的な行為」に言及したこと、戦争の反省に基づく日本国憲法に象徴される戦後日本の路線を「新しいレジーム」ということばで表現したことの二つが注目を集めました。
 就任時に「河野談話を継承する」としていた安倍晋三総理(当時)でしたが、3月に国会で「強制の証拠はない」と発言したことが「慰安婦問題は人権侵害の問題であり、北朝鮮の拉致問題について人権問題だから協力して欲しいというのとダブルスタンダードだ」とアジア各国ばかりでなくアメリカでも厳しい批判を呼びました。これは7月の連邦下院による対日非難決議採択の原因にもなりましたが、こういったことも今回の追悼の辞の背景にはありました。

 戦後わが国が歩んだ平和と民主主義の路線を「新しいレジーム」と表現したのは、言うまでもなく、日本政界の一部にある「戦後レジーム脱却論」は戦前の「対外膨張を指向し、国内的には自由を抑圧する体制」への回帰を指向しているのではないかという牽制です。
 「報復や脅迫の論理ではなく、国際協調によって運営され、法の支配の下で全ての人の自由・人権が尊重される世界の実現をめざす」と力強く述べた河野議長の追悼の辞には「河野らしさが発揮された」(政治評論家の森田実氏)、「日本の政治家として、確信に満ちた強いメッセージとなった」(高橋哲哉・東大大学院教授)といった賛辞が寄せられました。       (T)